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TPP参加は残忍な日米FTAの始まり

記事下に出る広告は忍者ブログの仕様でブログ主は関与していません。背景画像はアメリカ国内で行われたTPP反対行進写真です。(TPPとは「自動車」「郵政」「農業」「医薬品・医療機器」などが含まれる「投資」「金融」「通信」「工業」などをはじめとする24もの部会がある原則関税撤廃というルールと交渉内容は非公開の合意のある、初めはニュージーランドなどの小さな国がやっていた貿易協定でしたが2008年から事実上米国が乗っ取って主導権を握り、参加国と米国だけは保護主義で、一方的に自由化を求める米国との過酷なFTA状態になっているものです。)

   

移転しました。


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TPP参加は農家だけでなく日本国民すべてに被害を及ぼす自由貿易原理主義は危険だ

TPP参加は農家だけでなく日本国民すべてに被害を及ぼす自由貿易原理主義は危険だ
月刊 現代農業より転載 http://www.ruralnet.or.jp/gn/201103/tpp.htm
中野剛志
なかの たけし
1971年神奈川県生まれ。1996年通商産業省(現経済産業省)に入省。現在は京都大学大学院工学研究科に助教として出向中。著書に『成長なき時代の「国家」を構想する』(ナカニシヤ出版)『自由貿易の罠――覚醒する保護主義』(青土社)など。

TPP参加がもたらすのは農業と食料の危機だけではない。
安売り競争が激化し、底なしの不景気をまねく恐れがある。
TPPの被害を受けるのは農家だけではなく、「100%の国民全体」なのだ。
TPPはデフレを悪化させる

 TPPへの参加を推進する前原誠司外相が、昨年10月19日の講演で「日本の国内総生産における第一次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」と発言した。
 

 この発言が、食料の安定供給や環境保全など、農業の多面的な機能をまったく無視したものであることは言うまでもないが、この暴言とも言うべき愚かしい発言には、もうひとつ、重大な視点が欠けている。それは、TPPへの参加による貿易自由化が、デフレを悪化させるという点である。

 本稿の主題は、その点を明らかにすることにある。そのために、まずは、デフレとは何であるか、何が問題なのかを改めて確認しておこう。
恐ろしい経済の病気、デフレ

 デフレ(デフレーション)とは、継続的な物価の下落のことである。デフレは、需要が不足し、供給が過剰になる状態が続くことによって起こる。反対に、インフレ(インフレーション)は物価が継続的に上昇することであり、それは、需要が過剰で、供給が不足する状態が続くことで起きる。

 デフレとは、物の値段が安くなることなので、良いことだと思われがちである。しかし、実際には、デフレとは、絶対に避けるべき恐ろしい経済の病気と言ってよい。なぜなら、デフレは、経済を動かしている原動力である投資を抑制するからである。

 デフレによる投資の抑制は、次のようにして起きる。

 まず、デフレ、つまり物価の下落とは、同じお金でより多くの物が買えるようになることであるから、言いかえれば、お金の価値が上昇するということである。放っておいてもお金の価値が上がるのであれば、今、支出するよりも、しばらくの間、現金を保有していたほうが、将来においてより得になる。また、今、借金をすると、将来、返済するときに負担がより重くなってしまう。

 このため、企業は、借金をして将来のために支出するよりも、今は支出を控えて、むしろ負債を減らそうとするのである。企業は、一般的に銀行からお金を借りて投資を行なうが、デフレになると、お金を借りて投資を行なおうとはしなくなる。こうして、投資が減退し、経済全体の需要が縮小する。需要の縮小は、さらに物価を下落させ、デフレが悪化する。こうして発生した悪循環が、デフレにほかならない。

 日本は、10年以上も、このデフレにある。このような国は、戦後、どこにもない。
デフレは経済の病気
牛丼1杯が50円になれば、サラリーマンの給料も下がる
 

 さて、懸案の貿易自由化であるが、それは、このデフレという病状を悪化させてしまうのである。

 そもそも、自由貿易のメリットのひとつは、国内外の競争の激化によって、あるいは安価な製品の輸入によって、製品が安くなり、消費者が恩恵をこうむるという点にある。これについては、自由貿易論者であっても、異論はないだろう。

 しかし、デフレに悩んでいる経済においては、安価な製品の輸入は望ましいことではない。安価な製品の輸入によって物価が下がれば、デフレはよりひどくなるからだ。

 TPPによる貿易自由化により、日本の農業が被害をこうむるのではないかと懸念されている。しかし、問題は農家の被害にとどまらない。食料品の物価が下落することによってデフレが進み、経済全体が、国民全体が打撃をこうむるのである。

 例えば、現在、牛丼の安値競争が激化し、牛丼1杯280円とか、あるいは250円とかにまで下がっている。牛丼がここまで下がると、牛丼と競合する他の外食も値段を下げざるを得なくなり、原材料の生産や流通など関連する産業のコスト、とくに人件費も下がらざるを得なくなる。こうして値下げは牛丼にとどまらず、関連産業にも波及して、デフレを悪化させる。牛丼の安値競争で、サラリーマンは喜ぶべきではない。それは、デフレを促進し、企業の投資を冷え込ませ、ひいては自分の給料も下げてしまうのだ。

 そのうえ、TPPにより輸入牛肉と米の関税が撤廃されたら、どうなるかは目にも明らかだ。牛丼は、例えば100円以下とか50円以下とかになり、他の食品との価格競争はもっと激化し、デフレは止まらなくなるだろう。
輸入自由化でアメリカの不況も輸入される

 しかも、リーマン・ショック後の世界大不況において、アメリカからの農産品の輸入自由化によるデフレ効果は、次の4つが相乗して増幅される。

 第1に、関税の撤廃による価格の低下である。

 第2に、安価に生産されるアメリカの農産品の輸入による価格の低下である。

 第3に、ドル安でさらに安くなったアメリカの農産品の輸入による価格低下である。

 第4に、深刻な不況に突入して賃金が上がらなくなり、相対的に安上がりになったアメリカの製品を輸入することによる価格の低下である。

 この4つの効果が相乗するので、アメリカの農産品は極端に安価になって、日本市場に襲いかかるだろう。

 すでに述べたように、貿易自由化は、自国がデフレ不況にあるときにはやってはいけないのだが、貿易相手国もデフレ不況になりそうなときには、なおさら、やってはいけないのである。デフレ国からの製品の輸入は、デフレの輸入に等しいからだ。
政府の農業対策に期待してはいけない

 TPPを推進したい政府は、貿易自由化によって日本の農業が衰退しないよう、農業の生産性を上げるための対策を講ずるつもりらしい。しかし、アメリカの農産物が先ほどの四重のデフレ効果で増幅され、激安となって流入するのに、それでも日本の農業が生き残れる対策とは、いったい、どのようなものなのか。そんな天才的な対策を講ずる能力が政府にあるなら、TPPに入らなくても国際競争に負けない製造業を作るのに、その能力を使えばよいではないか。そのほうがずっと簡単だ。

 さらに、政府の農業対策には、十分な予算が投じられない可能性が高い。なぜなら、農業に対する助成は、WTO(世界貿易機関)交渉で大幅に削減されようとしているからだ。

 現在進行中のWTOのドーハ・ラウンドでは、農業生産者や特定の農産品に対する補助金を大幅に制限する国際ルールを作ろうという議論になっている。もし、この国際ルールが決まれば、日本は、TPPの参加のための農業対策において、十分な予算を出せなくなるかもしれないのである。ただでさえ財政が厳しいという理由で予算が絞られているのに、WTOのルールにも縛られようとしているのである。政府は、TPP参加の条件に、農家に農業対策を約束するかもしれないが、そんな約束は、早晩、空手形であったと判明するだろう。
農業対策が成功してもデフレからは逃れられない

 仮に、政府の農業対策が功を奏し、アメリカの農業に負けない生産性の向上が可能になったとしよう。それならば、確かに日本の農業は、TPPに参加しても生き残ることができるかもしれない。しかし、日本の農業は守れても、安価な農作物の輸入によるデフレを防ぐことはできない。それどころか、日本の農業が生産性を向上させ、安い農作物を出荷できるようになったら、それだけでも食料価格が下がり、デフレが進むのである。

 しばしば忘れられがちだが、生産性の向上はいつも良いことであるとは限らない。生産性の向上は物価の下落をもたらすので、インフレのときは良いが、デフレのときには、かえって景気を悪化させるので、やってはいけないのである。

 生産性の向上のための農業対策は、日本がデフレを脱却し、むしろインフレ気味になってからすべきである。政府は、農業の生産性をどうのこうの言う前に、まずはデフレを脱却することが先決である。そもそも、デフレにならないようにすることは、経済運営の基本ではないか。
アメリカは自国の雇用対策のためにTPPを利用しようとしている
 

 では、「今はデフレだが、将来はインフレになるかもしれないから、TPPに参加してもよい」という考えはあり得るだろうか。

 一見、あり得るようにみえるが、現実は、そう単純ではない。なぜなら、WTOなど既存の国際貿易の国際ルールの中で、「デフレになりそうになったら、関税を上げてもよい」と認めているものはないからである。

 こうした国際貿易ルールは、自由貿易を原理原則とする主流派経済学の貿易理論を基本としている。しかし、その主流派経済学は、貿易自由化がデフレを悪化させるという事態については、まったく考慮に入れていないのである。この主流派経済学の自由貿易イデオロギーが払しょくされないかぎり、「デフレになったら、関税を上げてもよい」という国際ルールが認められることはないだろう。

 とりわけTPPの場合は、そのようなルールはまずあり得ない。なぜなら、TPPを主導するアメリカは、世界不況にある中で、輸出拡大によって自国の雇用を拡大するためにTPPを考えているからである。

 アメリカが輸出拡大によって自国の雇用を拡大しようとしているということは、オバマ大統領自身が明らかにしている。オバマ大統領は、先般のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)横浜会合において、アメリカが今後五年間で輸出を倍増する戦略を進めていることを説明したうえで、次のように発言しているのである。

「それが、今週アジアを訪れた理由の大きな部分だ。この地域で、輸出を増やすことにアメリカは大きな機会を見出している。(中略)国外に120億ドル(約825億円)輸出するたびに、国内に5000人の職が維持される」

 アメリカは、現在、失業率が10%近くにまでなり、オバマ大統領は支持率が急落し窮地に立たされている。それで、オバマ大統領は、輸出の拡大によって雇用を創出しようと必死になっているのである。そのアメリカが「デフレの日本は、インフレになるまで関税を撤廃しなくてもよい」などというルールに合意するはずがない。

 貿易自由化は、農業を衰退させるが国民全体は利益を得るというものではない。それは、デフレを悪化させ、日本経済を衰退させるのである。TPPで被害を受けるのは、国内総生産の1.5%の第一次産業ではなく、100%の国民全体なのである。

 政府は、このデフレという問題をまるでわかっていないから、デフレを放置しているだけでなく、農業対策で生産性を向上させればTPPに参加できるなどと考えるのである。生産性の向上もデフレを悪化させるものなのだ。TPPの問題はデフレにあるのに、デフレを引き起こす農業対策など講じられたら、かえって迷惑である。

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