179-参-予算委員会-2号 平成23年11月11日

平成二十三年十一月十一日(金曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 十一月四日
    辞任         補欠選任
     西村まさみ君     櫻井  充君
     石井 浩郎君     山崎  力君
 十一月九日
    辞任         補欠選任
     外山  斎君     松野 信夫君
 十一月十日
    辞任         補欠選任
     石橋 通宏君     金子 恵美君
     大塚 耕平君     広野ただし君
     櫻井  充君     松浦 大悟君
     田中 直紀君     西村まさみ君
     松野 信夫君     外山  斎君
     赤石 清美君     林  芳正君
     草川 昭三君     西田 実仁君
     小野 次郎君     上野ひろし君
     大門実紀史君     紙  智子君
     片山虎之助君     舛添 要一君
 十一月十一日
    辞任         補欠選任
     金子 恵美君     石橋 通宏君
     西村まさみ君     安井美沙子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         石井  一君
    理 事
                植松恵美子君
                川上 義博君
                武内 則男君
                徳永 久志君
                有村 治子君
                礒崎 陽輔君
                山本 一太君
                浜田 昌良君
                中西 健治君
    委 員
                石橋 通宏君
                江崎  孝君
                大久保 勉君
                金子 洋一君
                小西 洋之君
                谷岡 郁子君
                外山  斎君
                友近 聡朗君
                西村まさみ君
                林 久美子君
                姫井由美子君
                広田  一君
                広野ただし君
                牧山ひろえ君
                松浦 大悟君
                安井美沙子君
                猪口 邦子君
                片山さつき君
                川口 順子君
                佐藤ゆかり君
                末松 信介君
                塚田 一郎君
                西田 昌司君
                林  芳正君
                丸山 和也君
               三原じゅん子君
                山崎  力君
                山田 俊男君
                山谷えり子君
                竹谷とし子君
                西田 実仁君
                山本 博司君
                上野ひろし君
                紙  智子君
                舛添 要一君
                福島みずほ君
   国務大臣
       内閣総理大臣   野田 佳彦君
       総務大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(沖縄及
       び北方対策、地
       域主権推進))  川端 達夫君
       財務大臣     安住  淳君
       厚生労働大臣   小宮山洋子君
       農林水産大臣   鹿野 道彦君
       経済産業大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(原子力
       損害賠償支援機
       構))      枝野 幸男君
       防衛大臣     一川 保夫君
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(金融)
       )        自見庄三郎君
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(経済財
       政政策、科学技
       術政策))    古川 元久君
   副大臣
       外務副大臣    山口  壯君
       財務副大臣    藤田 幸久君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  谷  博之君
       財務大臣政務官  三谷 光男君
       防衛大臣政務官  神風 英男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        藤川 哲史君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○予算の執行状況に関する調査
 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する件
 )
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○委員長(石井一君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
 議事に先立ち、一言申し上げます。
 本院議長西岡武夫君は、去る五日、逝去されました。誠に哀悼痛惜に堪えません。
 ここに、皆様とともに謹んで黙祷をささげ、哀悼の意を表しまして、御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。
 どうぞ御起立ください。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕

○委員長(石井一君) 黙祷を終わります。御着席願います。
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○委員長(石井一君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(石井一君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に中西健治君を指名いたします。
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○委員長(石井一君) 予算の執行状況に関する調査について理事会決定事項について御報告いたします。
 本日は、環太平洋パートナーシップ協定等に関する集中審議を行うこととし、質疑は往復方式で行い、質疑割当て時間は二百十分とし、各会派への割当て時間は、民主党・新緑風会四十八分、自由民主党・無所属の会七十五分、公明党三十八分、みんなの党十九分、日本共産党十分、たちあがれ日本・新党改革十分、社会民主党・護憲連合十分とすること、質疑順位につきましてはお手元の質疑通告表のとおりでございます。
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○委員長(石井一君) 予算の執行状況に関する調査を議題とし、環太平洋パートナーシップ協定等に関する集中審議を行います。
 これより質疑を行います。広野ただし君。

○広野ただし君 民主党・新緑風会を代表しまして質問をさせていただきますが、まず、西岡武夫議長の急逝に当たりましては、西岡先生は、本当にしっかりと物を決められたらてこでも動かれないと、こういうすばらしい偉大な政治家でございました。教育、また人材育成については人一倍熱心な方で、私たちはそれをまた肝に銘じて、遺志をしっかりと継いで頑張っていきたいと、こう決意を新たにするわけでございます。
 ところで、今日はTPP、トランス・パシフィック・パートナーシップ、このTPPについての集中審議ということでございます。まず、その概要というか、これはもう国民の皆さんがテレビを通じて、テレビの裏には国民の皆さんができるだけ理解を深めたいと、そういう気持ちでおられると思いますので、できるだけ分かりやすく政府側においても御説明いただければと思います。(資料提示)
 御承知のように、TPPは現在は九か国。最初は、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリだったですかね、四か国、P4から始まって、そしてその後随時増えてきて、昨年アメリカが入って九か国ということで発足をしています。十か年の間に原則貿易自由化、関税撤廃をすると、こういうふうに理解をしております。人、物、金、サービス等の自由な移動というもののほかに、公正な取引形態あるいはいろんな制度改革、こういうものが含まれているんだと、このように思います。
 非常に多分野にわたっていまして、物品市場アクセス、この中も工業製品、そして繊維・衣料品、また農業品というような形でありますし、そのほかに、この二十一のほかに首席交渉官会議というようなものも置かれているということでございます。
 それで、国論をまさに二分あるいは三分をする、賛成、反対、条件付賛成とか、いろんな形で今議論がなされておって、総理も熟慮中の熟慮ということで間もなく決断をされるんだと、こういうふうに思っております。そういう中で、これだけ議論が分かれておることでは、私はやっぱりそれぞれに言い分はあるし正しいところもあるんだと思っております。このTPP交渉に参加することによって、いいこともあるかもしれないけれども失うものもあるんじゃないかと。そういう中で非常な議論がある。また、もう少しいろんな形で対抗措置といいますか救済措置的なもの、安全ネットというものを整備をすれば、ある意味でまだいろんな理解が深まるということもあるんではないかと思っております。
 そういう中で、そのTPPの意義の中で、まず経済的な利益といいますかメリットというものを、これをできるだけ簡潔に総理からお伝えいただけませんでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まず、広野委員の御質問にお答えをする前に、先ほど黙祷をささげさせていただきました西岡先生でございますけれども、私もかつて、教育基本法改正の審議が行われているときに、民主党として日本国教育再生法というすばらしい対案を作っていただきました。私はそれを預かって衆議院の委員会で審議をする筆頭でございまして、大変熱心な御指導をいただいたことを強く記憶をしています。改めて御冥福をお祈り申し上げたいと思います。
 その上で、TPPの経済的な効果についてのお尋ねがございました。
 内閣官房による試算では、TPP協定交渉九か国と我が国が物品貿易について一〇〇%関税撤廃した場合、結果として日本の実質GDPが二・七兆円増加するとの結果が得られております。これは関税引下げに限られた試算であり、サービスや投資の自由化、貿易円滑化などの分野の改善が実現をすれば更に追加的な効果があると考えられています。

○広野ただし君 それで、一番今、JAグループですとか農業関係者、そういう方々、あるいは地方自治体、そしてまた地方の方々から、心配をしておられる、また非常な反発というか反対論もなってきている。そういう中で、経済的損失といいますか、こういうことになるとどういうことに損失が出てくるのか、農水大臣に伺います。簡潔にお願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 昨年の十一月に、全世界を対象にしていわゆる米あるいは麦など三十三品目を国境措置を全て全廃した場合に、そしてその際何も国内対策を講じない場合というこの影響は、農林水産物の生産減少分が四・五兆円程度になると、そして農林水産業及び関連産業のGDP減少額が八・四兆円程度になると、このように試算したところでございます。
 TPPに関しましては、まだ具体的な数字というものは詰めておらないところでございます。

○広野ただし君 総理、経済的なメリットだとか、そればっかりだとは思いません。世界の中で相互依存関係がどんどん深まって、いろんな、そういう貿易あるいは投資の交流ばっかりじゃなくて、文化的な交流、様々なものがあると思いますが、今、経済的なメリット、デメリットを比べただけでは損失の方が大きいんじゃないかと思われますけれども、その点についてはどうでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 今の内閣府でまとめた試算と農水省のまとめた試算でいえばそうなりますけれども、ただ、前提の置き方が全く違うということで、特に農水省の場合は何も政策を講じなかった等々のそういう試算でありますので、これちょっと一概には言えないんではないかと思います。

○広野ただし君 確かに、前提条件とかいろんなそういうものはあると思いますし、あくまで試算は試算だと思います。だけれども、一番TPPに交渉参加をしていくときにやっぱり大きな、何といいますか、メリットというか、経済的な以外の分野においてもどういうことを思っておられますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 我が国と、我が国だけではなくてAPECに参加をしているエコノミー、去年の横浜でのAPECの際に首脳が集まって合意をしたことがあります。それは、二〇二〇年までにアジア太平洋地域の自由貿易圏をつくる、FTAAPを実現をしていく、その道筋の中にASEANプラス3、ASEANプラス6、TPPとあると、こういうものを、道筋を通じて実現をしていこうということであります。
 ということは、このTPPを通じてアジア太平洋地域の貿易やあるいは投資等々のルール作りをしていくと。これは今九か国で議論をしていますが、開かれたものであるので、更にほかの国が参加をする可能性もあるという中でそういうルール作りをきちっとやっていくということが一つのメリットではないかというふうに思います。

○広野ただし君 ある意味では、TPPは一つの段階で、更にもっと加盟国を増やして次の段階があると、そういうようなことを今おっしゃったんでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) FTAAPへの道筋の一つにTPPという一つの今試みがあると、それは今九か国でございますけれども、APECの二十一のエコノミーに開かれておりますので、更にそれが増えていく可能性ももちろんあるし、現段階で興味を持っているという国も幾つかあるというふうに思いますし、明確にそこに入らないと決めている国はないというふうに思います。

○広野ただし君 ところで、いろんな心配がやっぱり、懸念とか心配あるわけですね。そういう中で、かなり前向きな人たちでも世界のブロック経済化に加担をするんじゃないかと、そういう心配の方々がおられます。実際、世界の中では、まずEUが二十七か国、大きな言わば地域連携で、まあ地域連合をやっています。そして、アメリカ、カナダ、そしてメキシコはNAFTAということで一つの自由貿易圏を持っている。そのほか、ここにありますように、ASEANですとかメルコスールだとかGCC、あるいは南アフリカの方にあると。
 こういう中で、TPPということになると一つのブロックを形成をするんじゃないか。これは、あの昭和大恐慌のときに、結局世界が貿易の壁をつくって、そしてイギリスは英国連邦ですし、アメリカは南北のブロックという形の中で、結局ブロック化がいろんな意味で貿易戦争を更に拍車を掛けたということがあるんで、そういうことの懸念を持っておられる人たちもかなり前向きな人たちでもおられますけれども、その点について、総理、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 広野委員御指摘のとおり、戦前はブロック化が進んだということがあって、その反省の下に戦後にいわゆるガットができて、そのガットに入ることによって日本も貿易立国として経済的な繁栄を実現をするという過程がございました。その後、ガットの後に今WTOができて、その枠組みの中では、WTOとして早くいろんな合意ができればいいんですけれども、その補完をする形でマルチあるいはバイでのEPA、FTA交渉をそれぞれが今やっているという中で、その中で一つの選択肢として高いレベルの経済連携の中でTPPも位置付けられているということでございます。
 もちろん、このTPP、入る入らないはまだこれから結論でありますけれども、日・EUも、あるいは日中韓もそれぞれ進めていきたいと我が国は思っているところでございます。

○広野ただし君 そのブロック化の問題のほかにもう一つ、自由化を促進していくときに、二国間、だからFTAだとかEPA、それを一つ一つ着実にやっていく、乗り越えていくと、こういう方法もあるんではないかと。もう既に日本も十何か国とやっているわけですね。そういうステップとこのマルチのものとどういう関係になるでしょうか。

○国務大臣(古川元久君) お答えいたします。
 この二国間と多国間の協議、これはまさに同時並行的に進めていかなきゃいけないものだと思っています。あれかこれかではなくて、先ほども総理も申し上げましたように、日本としては、FTAAP、アジア太平洋の自由貿易圏を構築を目指していく、それに資するようなものについては、二国間、今、日韓もやっておりますし、これから日中韓も進めようといたしております。そういう二国間のものとか、またこのTPPのような多国間のもの、そうしたものを並行的に進めていきたいというふうに考えております。

○広野ただし君 それともう一つ、アジアの成長、新興国の成長を取り入れていくんだと、こういうことが大きなこの交渉参加の賛成派の人たちの考え方だと思っているんですが、じゃ、現状においてこの九か国、あるいは日本が入ったとしても、アジアの主要国である中国あるいはインド、韓国も入っていませんね、インドネシアも入っていない。こういうまさにアジアの成長する国々が入っていないということについてどうお思いですか、総理は。

○国務大臣(古川元久君) お答えいたします。
 現時点におきましては御指摘の国は入っておりませんが、このTPP協定はAPEC参加国メンバー全てに開かれたものでございます。交渉未参加国の立場についてお答えする立場にはございませんが、これは既にTPP協定に一定の関心を示している国もあるというふうに承知をいたしております。
 なお、先ほど申し上げましたが、日本としては、このFTAAPに向けて、アジア太平洋の国々に全体として貿易や投資の二十一世紀のルールを作っていこうと、その先頭に立っていこうという考え方でやっておりますので、そこは日中韓であるとか二国間でやるもの、そしてまた、こうしたTPPのような多国間のもの、それを両方進めていきながら最終的にFTAAPにつなげていく努力をしていくと、その中で今御指摘のような国々も含めて考えていきたいというふうに思っております。

○副大臣(山口壯君) 先ほど中国の話も出ました。
 昨日、中国の程永華大使とも話したところ、TPPに日本が入るのかどうかについては物すごく関心を持っていて、それで、正直今の段階では中国は入れません。他方、アメリカについても、行く行くは中国については是非とも声を掛けたいというようなことを言っておるようです。
 それから、あとASEANプラス3ということでは日中韓、それからASEANプラス6ということではインドとオーストラリア、ニュージーランド、日本はインドともEPAを結びましたし、あとオーストラリアともこれからやっていきます。だから、そういうことを重層的に積み重ねながら、行く行くは大きなFTAAPに結べればいいと思っています。
 アメリカについては、二国間のものはもう受け付けないんだということでTPPという格好にならざるを得ないというのが今の実情です。

○広野ただし君 これは、先ほどブロック化という問題、ブロック化を促進するんじゃないかということと、いや、オープンマインドで、例えば今交渉参加をしていくという中の次のステップのときに、日本も、じゃ、中国、インド、インドネシア、タイあるいは韓国ですね、そういうところにオープンな形で声を掛けていくんだと、そういうお気持ちでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まずは、入るか入らないかというその今前提がちょっとまだありますので、ただ、その上で、最終的にはTPPもFTAAPへの道筋でございますので、FTAAPというのは、APECの二十一のエコノミーが入っていくという、そういう道筋をたどっていくための一つのステップでございますので、当然幅広く様々な国が参加するようなことが期待をされているというふうに思います。

○広野ただし君 それともう一つ、これは非常に大きな問題なんですが、まず交渉参加をして、そしていろんな交渉をしていく、そういう中において、これはどうしても日本の国益として駄目だと、こういうことになった場合、そこから脱退をするとか、あるいは国会で批准がなされないと、こういう事態に立ち至ったときに、言わば日本の信用というものは大失墜するんではないかと思いますが、その点、総理はどういうふうに思いますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 交渉参加するという前提に立つとするならば、それは国益を最大限に実現をするためにしっかりと交渉をするということであります。その際に、やっぱり守るべきものは守り抜くということをしっかりと、勝ち取るものは勝ち取っていくという姿勢でやっていくことということでありますけれども……(発言する者あり)ちょっと聞こえにくいんですけれども。その上で、そういう姿勢で臨んでいくということが基本原則だというふうに思っております。

○広野ただし君 それと、一番心配をしておられる農業関係、JAグループですね、そしてまた地方自治体あるいは地方の方々、これはまさに食と農林漁業、そういうところが衰退していくんじゃないか、そういう大きな懸念と心配を持っておられるわけですね。
 そして、そのことについて、十月二十五日に再生本部が基本方針と行動計画を決定しました。これは中身はそれなりのものだと私は思っておりますが、いかんせん、一つは、そこに資金が付いていないんですね、資金が付いていないんですよ。これは、何かもう一つ国民の皆さんが安心できない、農林水産業大丈夫なんだろうか、地方は大丈夫なんだろうかと、こういうことを思っておられるわけですが、その点について農林大臣に伺います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 大変御心配、また一面激励をいただきましてありがとうございます。
 私どもといたしましては、総理の所信表明におきましても、基本方針・行動計画、いわゆる食と農林水産の再生におけるこの計画なり行動をやっていく上においては政府全体の責任を持って着実に実行すると、こういうふうに書かれておるわけでありまして、当然、必要な予算をしっかりと確保していくというふうなことが大事なことだと思っております。

○広野ただし君 それで、私は、財務大臣、思いますのは、いろんな、例えば繊維交渉もございました。これは角栄さんの時代ですけれども、角栄さんはあのときに数千億円、予算規模が四兆円ぐらいですよ、全体、数千億円の救済措置なり構造改善事業を展開をされました。そして、今度、割と近くなりましたが、ウルグアイ・ラウンドですね、ウルグアイ・ラウンドのときも、これによって日本の農業はもうがたがたになるということで六兆円というお金を投入をいたしました。しかし、それは農業土木が多くて必ずしも農業を強くするということにならなかったわけですが、いずれにしましても、こういう日本の岐路に立つ、日本がどうなるんだと、あるいは大事な大事な国の根本である農林水産、そういうものは日本の伝統文化にも非常にかかわるわけですね。それが駄目になっていくかもしれない。
 そういうときに、なぜ、対抗措置、救済措置、支援措置として私はもう十兆円以上のお金を別途投入をすると、こういうことをやっぱり今言うべきじゃないかと、こう思うんですが、財務大臣はいかがですか。

○国務大臣(安住淳君) 私も、本当に日本の過疎地の代表のようなところで生まれ育っておりますので、本当にそういう方々の御心配、御懸念というのはもう十分先生の方からも伝わってまいることは事実でございます。ガット・ウルグアイ・ラウンドにおいても六兆百億円と。しかし、そのときの検証というのは実は余りなされていないんですが、農業土木に三兆円強使って圃場整備で田んぼは整備されましたけれども、農業の体質が強化されたかといえばいろいろな議論の分かれるところでございます。
 今後、TPPに参加するしないにかかわらず、日本の農業の体質強化のためには、やっぱり特段の、やっぱり必要であれば予算の措置で充実できるものは私は是非やっていきたいというふうに思っております。

○広野ただし君 まさに財務大臣もそういう過疎地のことをよく御存じだと、こういうことでありますし、総理も、私聞きましたけれども、小さいときに、家族の人たち、部落の人たちが田んぼに行かれてやっておられるときに、総理も小さいときに連れていかれて、それをお昼どきになったらみんなと一緒におにぎり食べたりいろんなことをして過ごされた、近所の人たちに面倒を見てもらったと、だから私は絶対農業はおろそかにしないと。こういうお話を私は漏れ聞いてきておるんですが。
 総理、やっぱり無手勝じゃ私は絶対駄目だと思うんですね。この十兆円をオーバーするようなそういう対抗措置といいますか、救済措置、支援措置を閣議決定すべきじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 御指摘のような私の幼児体験もございます。父方も母方も農家でございましたので、その意義というか、農業の再生は本当に必ず果たしていかなければいけないと思います。
 これはTPPとの関係ではなくて、いずれにしても所得が減少したりとか後継者難であるとか高齢化が進んでいるとか含めて農業の再生待ったなしだと思いますので、そのためのあの計画がこの間の基本方針と行動計画であります。政府を挙げて着実に実施をしていきたいというふうに思いますが、おっしゃったように例えば十兆とか、いきなりそのお金が、出す枠だけ決めてしまうというのは、私は、財務大臣もお話がありましたが、ウルグアイ・ラウンドの対策で六兆百億だったでしょうか、あの使い方はやっぱり厳しく検証しなければなりません。ただ、やらなければならないことにはきちっと必要な予算を付けていかなければいけないというふうに思います。

○広野ただし君 ここにありますように、この行動計画というのは、戦略一、戦略二、戦略三、あるいは戦略四で林業の再生あるいは水産業再生等々、あるいは東日本大震災にかかわるような点、こういう行動計画になっているんですね。
 だけど、画竜点睛なのは資金が入っていないということなんですよ。これをやっぱり何としても閣議決定していかないと、交渉参加をしていきますと、もうがたがたになっちゃうんですね、農林水産業、地方はですね。
 一番それを端的に表しますのは自給率。自給率はどうなりますか、農水大臣。

○国務大臣(鹿野道彦君) 自給率を五〇%にというふうな目標を掲げているわけでございまして、これは下ろすわけにはいきません。ゆえに、TPP協定にどうするかというようなことを、それにかかわらず、この自給率向上に向けて取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

○広野ただし君 これも試算なんですが、今四〇%の自給率が一〇%台に落ちるというような試算があるわけですね。そういう自給率が落ちますと、世界のいざ食料危機ということになった場合にどういうことになるんでしょうか。
 これは防衛大臣、食料安保の観点から、また農林水産業にお詳しいし、その点どういう、安全保障上どんな問題が起こるか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(一川保夫君) お答えをさせていただきます。
 私は今現在防衛大臣ですから、もう当然国防政策とか防衛政策、それから食料政策というのは国家の基本的な政策であるというふうに認識いたしております。そういう面では、国民の皆さん方のしっかりとしたそういうコンセンサスの中でこういう政策が遂行されるべきだというふうに基本的に考えております。
 防衛という観点から見ましても、私はやはり我が国の食料の自給率なり自給力といったものをしっかりと持っている必要があるというふうに思っております。それは、もうかねてから食料安保というような言葉まで使われているわけですから、そういう面では現状よりも自給率、自給力を向上させていくという政策は絶対に必要だというふうに思っておりますし、また、今こういうTPPとかこういうことが話題になっておるこの時期に、私はこの大臣になる前というのは民主党の中でもこういうプロジェクトチームのお世話をしていたこともありますけれども、やはりこういうときに、国民の皆さん方が農業政策なり食料政策に関心を持っているこの機会に、農業の果たす役割とか重要性といったようなものをしっかりと国民に浸透させるということも非常に大事な機会ではないかなというふうに私は思います。そういう中でしっかりと国民的なコンセンサスをつくり上げていくという努力は我々もしっかりとやらなければならないと、そのように思っております。

○広野ただし君 私はやっぱり、食料安全保障とかエネルギー安全保障と、これはもう国家の根本にかかわるようなことですから、それをしっかりとこのTPPに入ったときにおいても守れるようなことをやっていかなきゃいけない。
 先ほど総理は丼勘定で十兆円と、こう言われますけど、いろんな形からいいますと、例えば中山間地の問題も含めて、所得補償に三兆円ぐらい、五年間の間にですとか、あるいは六次産業化、こういうところに二兆円を入れるとか、あるいは構造改善に二兆円、そして林業に一兆円、水産業に一兆円、その他というようなことで、それはいろんな大きな割り振りというのはできるんですよ。これはもう農林水産大臣、得意な分野でいらっしゃいますから、そういうことを是非、これはもう少し時間あるかもしれません。だけれども、それをきちっとやらない限り日本の国家の基本がおかしくなってくるんじゃないかと、こう思っております。
 それと、続きましてもう一つ、日本の根本の米ですね、米を例外扱いということにはできないんでしょうか。この点について、農水大臣、伺いたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今先生からの御指摘はTPPの交渉ということにおいてのお話だと思いますけれども、御承知のとおりにこのTPP協定は十年間の間に関税撤廃と、こういうふうなことだということも承知しておるわけでありますので、除外品目が果たして獲得できるかどうかというふうなことは大変困難なことでもあるんではないかなと、こんなふうに思っておるところもあるわけでございます。

○広野ただし君 これは、原則関税撤廃、十年間の間にというようなことになっていますが、それは例えば関税を全くゼロにするんじゃなくて、三〇〇%とかいろんな形のやり方が私はあるんじゃないかと思うんですよ。そのときに、またそれにふさわしい所得補償方式とか構造改善をやっていかなきゃいけない、こういうことがありますから、これをしっかりとやっぱり脳裏に入れておいていただきたいなと、こう思います。
 防衛大臣、お忙しいようですから、ここで結構でございます。
 それともう一つ、この大きな安全ネットにかかわる問題なんですが、これは医師会ですとか歯科医師会ですとか薬剤師会、看護協会等が猛烈に今このTPPに懸念を表明をしております。そのことで、これも私は、医療の分野、介護の分野、こういうところにおいて国民皆保険は絶対堅持するということですとか、あるいは営利の企業参入というものは禁止にしておく、こういうことを含めた政策大綱ですね、こういう医療、介護の分野に関する政策大綱を閣議決定すべきじゃないかと。これは本当に大事なことだと思いますが、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 現時点において、営利企業の参入であるとかあるいは公的医療保険制度の在り方そのものについて、TPPの交渉において議論の対象とはなっていません。また、これまで御懸念をいただいている医師会であるとか歯科医師会であるとか等々の団体には政府全体として順次説明を今行ってきているところでございます。
 その上で、基本的には、国民皆保険という、まさにこれはほかの国よりもはるかに日本のレベルの高い誇るべきものについては、これ当然のことながら守り抜いていくということが基本中の基本で、壊すようなことはあってはならないということであります。

○広野ただし君 やはり、マイケル・ムーアの映画じゃありませんけれども、本当にまあ金の切れ目が縁の切れ目じゃないけど、金の切れ目が命の切れ目というような事態が起こっているわけですね。ですから、そういうことのない安全ネットをきちっと整備をしておくということでないと、その関係の方々、そしてまた国民の健康と命が守れない、また格差がいっぱい出てくると、こういうことになるんで、これは政府側にいろんな話聞きますと、いや、国会で答弁していますからと、こう言いますけれども、やっぱりしっかりとした大綱を持って、政策大綱でですね、閣議決定をすると。これは是非、TPPと関係なくてもやっていかなきゃいけないんじゃないかと思いますが、再度総理に伺います。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国民皆保険について言えば、これ、その他の国もそれぞれみんな違う制度になっています。これを一つのルールでやろうなんということは現実的に考えられないと思いますので、私はこれは議論の対象にならないというふうに確信をしています。もしなったとしても、守るべきものは守ると、それはもう最大限国益を守るというのが交渉だというふうに考えている次第です。
 その上で、政策大綱というお話がございましたが、これ例えば、仮にですよ、個別交渉に入ったとして、どういう問題が出てくるかというのはまだ何とも言えないところがあります。ただ、心構えとしては、それは食の安全の問題でも医療の分野でも守るべきものは守るというそのスタンスの中で、それは議論の中で、対応困難なもの、対応可能なものというのをきちっと国益を踏まえて議論をしていくということであって、TPPだけではなくて、余り大綱みたいな形で枠を決めて交渉するというやり方が本当にいいのかどうかというのは、これちょっとよく、議論があるんではないかと思います。

○広野ただし君 国論を二分、三分するくらいに皆さんが懸念をされたり心配をされたり、いろんな不信感がまた出てきているわけですね。
 やっぱり、こういう大きな国の岐路に立つときに、日本の進路に大きくかかわるわけですけれども、そういうときに、そういういろんな不安を払拭をしていくということがないと、どんなに外交交渉で頑張ろうとしても国内ががたがたですと、これなかなかどうにもならないわけですね、これはまあ釈迦に説法ですけれども。ですから、やっぱり安全ネットというものをしっかりと整備する、これは先ほどの農林水産に対する行動計画というものとこの医療、介護の分野、この二つは本当に皆さん心配しているわけです。そして、がたがたになるかもしれないんですね。ですから、これはもうしっかりと閣議決定等をして守るということを是非考えていただきたいと、こう思います。もう一度、総理。
   〔委員長退席、理事川上義博君着席〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君) そのいわゆる交渉論の体制整備の中で、交渉するときのその交渉の仕方と、それから国内できちっと情報を提供して説明をし、国民的な議論を起こしながら世論の御支持をいただくというのが、これTPPだけではなくてあらゆる交渉の基本だろうと思いますので、その認識は共有させていただきたいと思います。
 その上で、例えばこれ、国民皆保険制度、閣議決定をしてということですが、既にこれ何回か閣議決定しているんですね、国民皆保険制度の堅持については。それは変えてはいませんので、その方針に臨んでいきたいというふうに思います。

○広野ただし君 それと、もう一つ心配を皆さんしておられるのは、東日本大震災という千年に一度のような大災害があって、昨日、衆議院の方に、十二・一兆円の三次補正は通過をいたしましたけれども、どうしてもこの復旧復興がいまだしという感じなわけですね。そういうことのときにTPP交渉参加というのは、この時期はどうなんだということをやっぱり懸念しておられる方々はいっぱいおられるわけですね。この点について総理はどうでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ちょうど今日が東日本大震災の発災から八か月であります。ということもありますけれども、この震災からの復興を、そして原発事故の収束を、これは我が政権の最大かつ最優先の課題としています。そのために今回、昨日、第三次補正予算、衆議院通過させていただきましたけれども、この一日も早い成立を改めてお願いをしたいと思います。
 その上で、加えて、おととい、民主党の経済連携PTの中で御提言をいただきました。その御提言の冒頭に書いてあることもこの震災の復興にしっかり対応するようにということでございますので、それを踏まえてしっかり対応していきたいというふうに思います。

○広野ただし君 それともう一つは福島ですよね。この福島原発のこと、これも総理は、福島原発が収まらないと、福島が再生しないことには日本の将来はないというくらいにもう言い切っておられるわけですね。
 ところが、原発の冷温停止ですとかいろんなことがまだ全然めどが立たないと。こういうことについてめどが立つまでもう少し待つ、見合わせると、TPP交渉参加についてですね、こういう考え方の方々もおられるんですね。こういうことについては総理はどうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) TPPを別においても、例えば冷温停止、これはスケジュールといいますか工程表、ロードマップによってステップツーという形で位置付けられていますけれども、これ、年内に実現をするということを目標に今全力で取り組んでいるということでありますし、除染対策についても、予備費と今回の補正と来年度の予算要求分合わせて一兆円以上超える今予算措置をとろうとしています。それを踏まえて、国が責任を持って除染を進める等々、福島の再生に向けては全力で尽くしていきたいというふうに思いますけれども、その外交交渉の問題とこの国内の進行と、これはかかわりのあるところはあるかもしれませんけれども、基本的には最優先で復興は取り組んでいくし、原発の事故の収束も最優先で取り組んでいくという姿勢に変わりはありません。

○広野ただし君 やはり東日本大震災、これはもう千年に一度というような大災害なわけですね。そこで、しかも、安住財務大臣もあれですが、大変な被災を受けられたわけですが、東北は特に農林水産業のウエートが大きい、そこにTPPということになりますと二重苦のような形になるわけですね。
 ですから、その場合においても、先ほど農水大臣、行動計画、これにまた例えば資金的なものもくっつけたとしても、東日本についてはもう一つ一段のものがないと、今みんな大変な状態でへたばるような、もう何にもない、財産も何もなくなったと、残っているのは命だけだと、こういう人たちがいっぱいおられるわけですね。そういう中で今乗っかっていくということについての積極的な理由をちょっと御説明いただきたいと思います。
 総理、要するに、そういう被災をしておられる、大変なんだけれどもこれをやっていくことによって、いや、未来が見えるんだというような何か積極的なことがありますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 高いレベルの経済連携と、特に被災地は農林水産業が非常に盛んだったところですからその復興をしなければいけないということと、これは両立をしなければいけないと思います。これはTPPに限らず、高いレベルの経済連携と農業の再生というのは、これは両立が不可能と言う方がいらっしゃいますけれども、しなければならないというのが基本的な認識であります。

○広野ただし君 まさに、そういう心意気は分かるんですが、ですからこそ、せっかく行動計画を作ったわけですよね。それにしっかりとした資金的な裏付けを総理として、また内閣全体としてやっていきませんと、私はこれもう無手勝ではこういう外交交渉、絶対できないと思いますね、やっぱり何かしかるべきものをやらないと、そして安全ネットを張っておくということはもう最低限必要だと思います。
 そういうことと、もう一つ懸念に思っておられるのは、今欧州が、ヨーロッパが揺れ動いておりますね。世界経済がどうなるのか。まさに、場合によってはみんなが財政立て直しのために緊縮政策に入っていく、こういうことになると、ずっと縮んでいくわけですね。もう非常に大変な世界経済になるおそれがある。これがもう少し先が見通せるというような状況になるまでこのTPPをもう少し見合わせないとまた何重苦にもなると、こういうおそれがあるわけですが、その点、総理、どうですか。

○国務大臣(安住淳君) 被災地のことも少し申し上げますと、例えば先生、私は参加、不参加のことを申し上げるわけではなくて、水産業は基本的には、もう自民党政権下から余りこれは保護政策を受けてきたわけではなくて、全く自由競争にさらされていて、世界の中で本当に頑張って、三陸の水産業は、中国やもう韓国に既に売っておりますし、例えば船を造るにも、漁船は補助金を、例えば農業の場合であればハウスを造るのに補助金が出ますけれども、漁業は全く出ない中で頑張ってきていますので、これは余り、貿易のことに関して懸念があるかといえば、そうではないと思います。
 それから、農業地帯ではあります。しかし一方で、セントラル自動車等を始め自動車の集積基地でもあるので、例えば私の地元なんかも、これは率直に事実を申し上げますと、お父さんは確かにこれはもう二町歩、三町歩の田んぼを持っているけれども、息子さんは例えば自動車関連に勤めているとか、それが日本の実態なので、そういう中で不安をできるだけ払拭するために、私も財務大臣としてできるだけのことは本当にさせていただきたいというふうには気持ちとしてもたくさん持っております。特に、農家の皆さんは一人一人が自由に売り買いをできて御商売をできるというのはなかなか大変なので、そういう中でやっぱり農協の皆さんの不安なんかもあるでしょうから、それは鹿野大臣もおっしゃったように、いろんな宿題をこれから解決しながら足腰の強い農業というものをつくっていきたいと。
 欧州の問題は、縮んでいく経済のおそれというのはあるからこそ、逆にG20やG7でもやはり、法人税の例えばディスカウント競争なんかをそろそろやめた方がいいんじゃないかとか、金融取引税の問題が今になってEUで出てきているのも、やっぱり行き過ぎをどうやって、いずれにしても、何ていいますか、規制をするか、またバランスのいい貿易をどうつくるかということを今世界で本当に苦悩していますので、そういう中で本当に規制がいいのか自由化がいいのかというのは、もう大変な激論をしている真っ最中だということだけ申し上げておきたいと思います。

○広野ただし君 やっぱりどうしても、行動計画をせっかく作ったわけですから、そういうことに合わせてもう一つ具体的な、皆さんが、ああそうか、これによって農林水産業が元気になるんだというようなことをやっぱりしっかりと示してもらいたいなと思っておりますし、もう一つ、ちょっと戻るかもしれませんが、食の安全の問題ですね。これは農薬のことですとかあるいは遺伝子組換えですとか食品表示の問題ですとか、そういうことがやっぱりTPPに入ることによっていろんな、おろそかになるんじゃないかと。これは国民の健康と命にかかわることですから、その点について、農水大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 食品の安全基準というのは、我が国の安全基準というふうなものをしっかりと守っていかなきゃならないと思います。

○広野ただし君 いずれにしましても、総理、熟慮に熟慮ということですし、このTPPの衆参における集中審議、そういうものも踏まえて決断されるんだとは思いますけれども、まさに日本の一つの大きな岐路だし、日本の地方におけるありよう、日本全体のありようというものにもかかわる大事なことだと思います。そのときに、先ほどからも何回も申し上げて申し訳ないんですけれども、安全ネットというものをちゃんと準備するということと、そういう弱い分野といいますか、非常に不安になっていることについてやっぱり支援措置をする、助成措置をする、そして、そういう不安の人たちが少しでも不安が解消されるということをしっかりとやっていただきたいと思います。
 それでは、質問を終わります。

○理事(川上義博君) 以上で広野ただし君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────

○理事(川上義博君) 次に、林芳正君の質疑を行います。林芳正君。

○林芳正君 自民党の林芳正でございます。与えられた時間の中で、私と、関連に佐藤先生にも立っていただきまして質疑を進めていきたいと思います。早速、時間も限られておりますので中身に入りたいと思いますが。
 総理、ちょっと眠そうな感じがするんですが、多分、昨夜は眠れない一夜を過ごしたんではないかと、こういうふうに思います。昨日決めるというふうに我々も思っておりましたし、また国民の多くも固唾をのんで見守っていたんではないかと思いますが、急に、今日は決めない、明日に延ばすと、こういうことになったというふうに報道で接したわけでございまして、なぜ一日決定を延ばされたのか、その理由をお聞かせください。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ちょうど、民主党の経済連携PTで二十数回にわたって、そして五十時間以上にわたって御議論をいただきました。その御報告というか御提言をおとといPTからいただき、そして、昨日、政調会長から政府と民主党の三役会議で御報告をいただきました。それを踏まえて政府・与党の間で議論をさせていただきましたけれども、これは更に熟慮をした方がいいという判断の下、改めて今日、この集中審議が終わった後に引き続き議論を行い、また関係閣僚との意見交換をしながら最終的な結論を導いていきたいというふうに思います。

○林芳正君 今この議論を聞きながらお考えになると、最終的な結論をということですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 政党内の議論も当然踏まえなければいけませんが、午前中の衆議院の集中審議、そしてこの参議院の集中審議、ここでの御議論も大いに参考にさせていただきたいというふうに思います。

○林芳正君 衆議院でのやり取りを私見ておりましたが、公明党の西先生から公明党としての見解が示されておられました。また、私も小委員長として我が党の見解の取りまとめをいたしましたが、このAPECでの判断は拙速ですから反対であるということをまとめさせていただいております。
 民主党のペーパーも見せていただきましたけれども、今拙速であるという方が多数であるからそれをベースに慎重に判断してもらいたい、たしかこういう内容であったというふうに思いますが、その中で判断をするということは、民主主義を尊ぶ野田総理であれば、今の段階では拙速であるということに当然なると思いますけれども、いかがでございましょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党の御提言の中には、時期尚早である、慎重であるべきだ、あるいは推進すべきだと、いろんな意見があったけど前者の方が多かったと、したがって慎重な対応を求めると、こういう趣旨の御提言でございました。そのことも重く受け止めながら最終的に判断をしていきたいというふうに思います。

○林芳正君 今の言葉は国民の皆さんも聞いておられましたし、民主党の皆さんも聞いておられたと思いますので、重く受け止めて判断をされるというふうに御答弁をされたということを受け止めておきたいと思います。
 これを決める段階で閣僚委員会というのを開かれるというふうにお聞きをしております。そこで、閣僚委員会で最終的な議論をされると、こういうふうに思いますが、総理が決断をするに当たってそれぞれの関係の閣僚の皆さんから意見の開陳があるということだろうと、こういうふうに思いますので、まず、連立を組んでおられる国民新党の自見大臣にお伺いいたしますが、もし総理から今回参加をするという判断があった場合に、賛成されますか。

○国務大臣(自見庄三郎君) 今、林議員から御指名がございましたように、私は今、国民新党の副代表という立場でございます。そして、御存じのように、国民新党は、五年前に小泉、竹中さんがした郵政改革は、当時、新保守主義に基づいた構造改革の象徴的な一丁目一番地と小泉さん自身が言われたわけでございますが、それをやっぱり変えていくことが歴史に沿った話だと、そういう我々は重たい使命感を持った政党だというふうに私はささやかでございますけれども自負をいたしております。そういった立場もありまして、野田内閣とは民主党と国民新党の連立内閣でございまして、私は今も先生が御指摘になったように野田内閣の閣僚の一員でございます。
 そういった中で、今日、官房長官が、官房長官の記者会見では、亀井静香さんが、亀井国民新党代表からAPECでの交渉参加表明について慎重であれというふうなことを言われたというようなことが、意見の開陳が、記者会見でございますから正確なことがないと思いますが、そういったことを考えて、私は野田内閣の一員でございますから、先生たち今御指摘について、政党人としては、現時点では、私、もう二十六年国会議員をさせていただきました、今の時点では予断を持って言うべきでないというのが私は連立政権の、今連立政権を持っている人間の矜持だと思っております。
   〔理事川上義博君退席、委員長着席〕

○林芳正君 野田内閣の一員であるということは、もし連立を離脱される、若しくは閣僚を辞任されればその日からそうではなくなるわけであります。
 したがって、問題は、先ほど前段でおっしゃった、これが本当に新自由主義なのか保守主義なのか私は分かりませんが、TPPというものに対して党首の亀井代表が反対をされておられるということであれば、その党の方針を取るのか、あるいは内閣がその逆の判断をされた場合にその方針を取るのかという判断になると、こういうふうに思いますが、どちらの判断をされますか。

○国務大臣(自見庄三郎君) 私はそういう質問が来るだろうと思いまして、亀井国民新党代表からは、今日の官房長官の記者会見でございますが、APECの交渉参加表明について慎重であれと、反対という言葉を使っておりません。ですから、国民新党の中では、反対の人もいますし、慎重もいますし、非常に意見を言わない人もおりますので、何もきちっと私は組織決定をしたとは思っておりませんけれども、郵政民営化は、西田先生が言われるとおりに、これは絶対反対で変えていかねばならないと思っておりますけれども、このことについては、私は現時点では予断を持って言うべきでないというふうに思っております。

○林芳正君 今大事なことをおっしゃって、国民新党は党としては正式にはTPPに対する反対という立場決めておられないということでございましたので、慎重というのは、反対と言わないために慎重とおっしゃったんだというふうにわざわざおっしゃっていただきましたので、スタンスが見えてきたような気がいたします。
 鹿野大臣にも同じ質問をお聞きしますが、もし総理が閣僚委員会で参加するという御判断を示された場合、賛成されますか、反対されますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 党のいわゆる考え方というふうなものも示されているわけであります。私自身も、あらゆる各界の方々からもいろんなお考えもお聞かせいただいております。そういうものを踏まえて私なりに考え方を申し上げたいと思っておりますが、賛否については、まだこうやって参議院でも審議中でございますし、これからいろいろな形で議論されるわけでありますので、そのことについてはどうするかということは控えさせていただきたいと思います。

○林芳正君 先ほど総理は、一日延ばされた理由で、今日の審議も聞きながらとおっしゃったんで、本当に審議をしようということであれば、こういうことを言おうと思っているということぐらいはここで御披露いただいて、それについて我々がどう思うかということをやった方が審議が深まると、こういうふうに思いますが、いかがですか、鹿野大臣。

○国務大臣(鹿野道彦君) いろいろな考え方というふうなものも私もちょうだいいたしております、先ほど申し上げましたとおりに。そして、そういう中で党の方も一つの考え方を示されたということでございますから、そして閣僚委員会においても議論をするということでございますので、今この段階で、私が賛否についてどうするかというふうなことの質問を受けましたけれども、これについては、私自身、この段階では云々させていただくことは控えさせていただきたいと思います。

○林芳正君 最初に賛否を聞いて、賛否はできないとおっしゃったんで、それなら、その前段でおっしゃった、いろんな考え方を持っておられるとおっしゃったんで、その考え方をここでおっしゃっていただけませんかと聞きましたんで、もう一度お尋ねします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的には、党の考え方というものが私はいろんな形で集約をなされたというふうなことは、やはりこれは受け止めていかなきゃならないと、いわゆるいろんな意味で慎重なそういうふうな判断を丁寧にすると、こういうようなことは、当然私も党人でありますから、受け止めていかなきゃならないと思っております。そういう中で、総合的に私自身も判断をしていきたいと思っております。

○林芳正君 党人としては分かりましたけれども、農水大臣として、農林水産業を所管していらっしゃる立場ということではどういうお考えですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 被災地の皆様方の、漁業者、農業者の方々のお気持ち、また原発事故で大変日々御苦労なされている方々のお気持ち、そして、現実、全国におきましてこの第一次産業にいそしんでいただいている方々のお考えというふうなものはいろいろございますけれども、そういうことを全体としてとらまえていかなきゃならないと、こういうふうに思っております。

○林芳正君 これは我々だけではなくて、例えば何十時間もそこで泊まりがけで座込みをされておられる若い農業者の方がいらっしゃいます。そういう人たちに、今の御答弁だけで、農水大臣、終わって本当によろしいと思いますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的に私、申し上げました。第一次産業において本当に日々いそしんでいただいている方々のお気持ちというふうなものはきちっと受け止めてやっていきたいと、こういうことであります。

○林芳正君 しっかりと今のお言葉を果たしていただきたいと思います。
 私は、閣内で、例えば経産大臣が通商の立場から積極的にやる、そしてそれを農水大臣が農林水産業を所管する立場から反対の意見を述べると、これやっていただきたいし、今日集中審議ですから、それをもっと出してもらいたいんですね。その上で総理から、こういうことだから私はこういう方針で臨むと。
 例えば、ずっと聞いておりますと、先ほどから保険の話ありますね、医療保険。絶対にこれは触れさせないとおっしゃった。農業だって、一番大事なことは米です。例えば、米と皆保険は守るという条件でやる、こういう案を俺は持っているんだと、そういうふうに何でおっしゃれないんですか、ここで。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 例外なき関税撤廃という形で、原則としてという形なんですが、じゃ、それを例えば段階的に撤廃していくのか、即時撤廃なのか、再協議があるのか、例外を認めるのかというのは、これはまさに交渉過程の中での議論だろうというふうに思います。そのときに我が国のセンシティブ品目についてはしっかりと議論を、私どもの国益を踏まえて議論していきたいと思いますし、公的保険制度については先ほど申し上げたとおりでございます。

○林芳正君 ですから、先ほど申し上げたとおり、これは別途閣議決定していますというような程度だからみんなが不安に思うんです。もう一度、これに当たってこれとこれは守ると、そういうふうにおっしゃって、それでどうだという議論をなぜ決断をされる前にされないんですか。(発言する者あり)

○国務大臣(枝野幸男君) 林先生、十分御承知の上でお尋ねになっているんだろうというふうに思いますが、当然、外交交渉、通商交渉をやるに当たっては、我が国としてここはしっかりと守らなければならない、何が何でも守るということについてのしっかりと戦略を立て、その意思をしっかりと固めた上で協議をするということ、国益を守るという形では当然でありますが、その一方で、じゃ、この国は交渉に当たって何を最優先で何を絶対に守るんだというような、こちらの戦略の手のうちを全部さらした中で通商交渉をやったら、取れるべきものまで取れなくなってしまいます。
 基本的に我が国の……(発言する者あり)この政権の姿勢というものは、これは林先生も十分御承知だろうというふうに思います。そうしたことの中で御判断をいただけるものと思います。

○委員長(石井一君) 答弁は簡潔に願います。静粛に願います。

○林芳正君 なるべく総理と議論をさせていただきたいと思います。私は経産大臣の答弁は後で求めるところありますけれども、ちょっとびっくりしたのは、今ぐらいの基本的な話をなぜ総理がおっしゃれないのかということなんです。
 交渉については手のうちをばらさない、当たり前ですよ。だけど、国民的議論をしようと言っているんだから、国民のコンセンサスを得るためにこれぐらいのことをしたらどうですかというふうに私は言っているんです。それは、交渉等のタクティクスとのトレードオフですよ。全く国民との議論がなくて、コンセンサスもなくて、それで交渉に入って何か妥結したって、それ通ると思いますか、総理。どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 例えば農産物だったら、センシティブな品目については、これは対応可能なのか困難なのか、その判断がある、そこで困難な場合には、じゃ、例えばその対応策、対策はどうするのかという議論になっていく、その対策については万全の予算措置をとる等々、しっかりと国益を踏まえて対応していくということであります。

○林芳正君 例外措置というのは、今私が知り得る限りでは、何年でゼロにするかという例外はあっても、関税が残るという例外ないんですよ。それ御存じですか、総理。それを知っていておっしゃっているんなら、かなり言葉のあやでここの場を乗り切ろうという感じがしますけれども、私は総理何年か存じ上げていますから、決してそういうことをする人ではないと思いますけれども、そのことを御存じでおっしゃっていますか、今。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 原則として十年以内に関税を撤廃をしていくという原則があると、その中で、その中の議論はまだ柔軟性があるんではないか。即時撤退は何なのか、あるいはもうちょっと長くできるのか、再協議ができるのか、例外もあるのか含めて、そこはまだ定まっていないというふうに私は理解しています。

○林芳正君 やはりそこは残念ながら少しぼやかしておられるなと思いました。例外という言葉の定義なんですよ。関税がゼロにならないという例外があるかないのかというのは非常に大事なところだと思いますけれども、そのことについて総理の認識を問います。総理の認識を問います。総理。(発言する者あり)

○委員長(石井一君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕

○委員長(石井一君) 速記を起こしてください。
 それじゃ、誰ですか。極めて短く御答弁願います。枝野経産大臣。

○国務大臣(枝野幸男君) 例えば、アメリカとオーストラリアのFTAでは一部除外品目も認められていて、米国などはTPPにおいてもその維持を目指していると承知をしております。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 例外をつくることを目指している国々もいろいろあるというふうに私は承知をしています。

○林芳正君 今みたいな基本的なことを、枝野さんが答弁した後で答弁しようと思っているということ自体が問題ですよ。例外の定義を聞いているんです。例外の中に関税がゼロにならないということが含まれているか含まれていないのかぐらいの認識が、総理、ほかの方が答弁しないとできないんですか。それは私、ちょっと失望しましたよ。TPPは昔から総理は野党の時代からおっしゃっていると何か見たんで、相当詳しい見識をお持ちになって信念で進めておられると、こういうふうに思っていましたよ。だけど、そんな基本的なことを御存じない。少し残念です。
 そこで、なぜこういう状況になってしまったのかということを少しお話ししたいと思います。
 私、予算委員会でTPPをやるのはもう三回目です。ですから、いろんなことを聞いてきましたけれども、最初のパネルを出していただきたいと思いますが。(資料提示)
 鳩山総理が就任の最初の演説で、緊密かつ対等な日米同盟とおっしゃいながらも東アジア共同体という構想を出されたのが、二〇〇九年の十月二十六日です。その後、オバマ大統領が来られてサントリーホールで演説をされたときに、実はとても大事なことをおっしゃっていて、韓国とバイでやりますと、そしてTPPの皆さんとも、したがってそのときアメリカはTPPの皆さんと三人称で言っているんです、自分は入っていないから、エンゲージという言葉を使って関与という非常にふわっとした言い方をしているんです。
 どういうことか、東京へ来てそれをおっしゃったという意味は。バイでやるのか、TPPに行くのか、日本もそろそろ決めてくださいなと、こういうメッセージですよ。そこで決めなきゃいけなかったときに何をしたか。十二月十日、小沢訪中団。これを見て、三月に米国は、新たにTPPの交渉に参加することを正式に決めるわけであります。
 ですから、この間に、いや、やっぱりバイもやろうよということを言っていたのか、いなかったのか、いまだに確たるお答えがありません。先ほど外務副大臣からは、もうアメリカはそんなことやらないんだという断定的な言い方がありましたが、前回の予算委員会で前原当時の外務大臣からは、そういうように聞いているという伝聞ではお答えがありましたけれども、正式に日本政府として、また外務省として、日米バイをやりましょうと言って、もうやらないんだと断られたという答弁はいただいておりませんが、それはそういう事実はありますか。

○副大臣(山口壯君) 種々のやり取りからこのTPP交渉に注力しているということを何度も何度も米側からは聞いています。
 今、林議員から、米国に対してバイの交渉を正式に申し込んだのかということに対しては、そういう正式に申し込んだということはありません。他方、いろんな経緯の中でそういうふうに承知しているということです。

○林芳正君 当時は野田総理は財務副大臣でいらっしゃいましたが、今のお話のように、こういういろんな状況があった中で、なぜ、多分これ民主党のマニフェストかインデックスにもそれらしいことは書いてあったと思うんですね、日米のFTAというのは、いろいろ議論がされたところです。TPPというのはたしか一言も書いてなかったと思います。
 その状況の中で、今外務副大臣から御答弁がありましたけれども、正式には申し入れたことがないと。気が付いてみたら、井伏鱒二の「山椒魚」じゃありませんけれども、もうその選択肢はなくなっちゃっていたと、こういうことなんですか。本当に、総理、それでいいですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 経緯については外務副大臣が御説明したとおりだったんだというふうに私も思います。正式には日米FTAということを協議の申込みはしていなかった。その中で、今巷間言われているように、アメリカについては、今二国間の協議はやらずにTPPに中心というか、心を砕いているという状況の中で、今我が国の対応をどうするかという段階に来ているということであります。

○林芳正君 なぜやらなかったのかの理由が今御説明がないんですが、そうすると、日米のバイというのはない、こっちはTPPになるんだというのは、大体いつごろからそういうふうになっていたんでしょうか。

○副大臣(山口壯君) TPPについては、オバマ大統領から始まったわけですね。それで、彼らも九十日を経て始まったわけですけれども。このバイについてというのは、その前のずっといろんな政権の流れがありますけれども、私たちもそういう意味では、アメリカとのFTAをできるだけ積極的にやりたいなという気持ちもマニフェストには書いているわけですけど、そこはそういう意味では、このバイの話というのではなくて、今TPPの話でいっているということです。

○林芳正君 答弁されればされるほど混乱するんですが。私、こうやって時系列で示していますから、二〇〇九年十月以降、民主党政権ですよ、そのときにいつ、日米バイは、言いもしなかったけれども、正式には、だけど無理そうだからというのでTPPしかないなと思い始めたのは、この辺のどこですか。そんなことも分からないんですか。総理。

○委員長(石井一君) 総理に答えてもらう前に簡単に答えてください。枝野通産大臣。

○国務大臣(枝野幸男君) 林先生、これも御理解の上お尋ねになっているんだと思いますけど、私どもが今TPPに交渉参加をしようかどうかということを考えているのは、FTAAPに向けた一つのプロセスとして検討していることであって、日米のバイのFTAができないから代わりにTPPをやるとか、そういった議論の話とは違う話の中で出てきているということは大前提で御理解ください。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 新成長戦略の中にTPPという言葉はありません。高いレベルの経済連携やっていこうと、FTAAP入れているんです。FTAAPの道筋の一つにTPPがあるわけですので、新成長戦略の昨年六月をまとめた段階からは意識をして、そして昨年の十一月の包括的な経済連携方針の下で情報収集のために協議と、そういうプロセスをたどり始めているということであります。

○林芳正君 あらかじめ資料をお配りしておいたので先読みをされちゃったんですが、次の先ほど出しかけたパネル、お配りしている資料ですが、菅さんになってすぐの昨年の六月十八日に新成長戦略、今総理が先におっしゃっていただきましたが、こういう閣議決定をされておられます。これがそのアジア経済戦略のところのページですが、全体でFTAAPを二〇二〇年だったと思いますけどやっていこうという中で、どうやってやっていくかという基本方針、これ図示したものですけれども、ここにTPPという言葉は出てきていないと。
 菅さんと何度かやりましたけれども、TPPどこに入っているんですかと言うと、この「APECエコノミーとの交渉」という白い枠のすぐ下の、「APECにおけるFTAAPの議論を加速、FTAAP実現のための道筋の検討」と、こう書いてあります、そこに入っているんだと。苦しい答弁ですね。そのほかにもASEANプラス3とかASEANプラス6とかいろんな道筋があると、こうもおっしゃっておられた。ASEANプラス3とASEANプラス6は、きちっとそこに「政府間議論の加速」というふうに具体的に書いてあります。
 明らかにTPPはこの六月の時点では政府の構想の中になかったというふうに見る方が自然だと思いますけれども、いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ここに書いてあるように、FTAAPを実現をしていくということは意識をした新成長戦略です。その道筋は、今御指摘いただいたとおり、しっかり明記しているASEANプラス3、ASEANプラス6であって、これを政府間で検討を今している段階でありますけれども、それを加速をさせていくということはここに記載をしているとおりです。
 道筋の中にもう一つあるのが今議論になっているTPPであって、TPPについてはここに確かにストレートには書いてありませんが、これは道筋の中に入っている、そのことを意識をすることがあったから昨年の横浜APECの合意とかということの流れになっていったということであります。

○林芳正君 やっぱり野田総理は人がいいなと思ったのは、今、最後のところをおっしゃるときに、ちょっとにこっとされたのでね。これ、素直に、どう読んでも、一行目に書いてあることは、全部道筋というのは、どういう道筋があるかということを考えると、地図をかくということだと思うんですよ。どの道を行くかというのが具体的に下にいろいろ書いてあって、ASEANプラス3、プラス6、日中韓、日韓、日・ペルー、日豪、日米、これ全部そうですよね。で、日豪はやっておられる。だから、本当にこの六月の時点で今ぐらいの議論、政府内でされておられれば、当然ここにTPPは入ってくるはずなんですね。
 私、今日は出しませんけれども、この文章編というのもあるんです、閣議決定の。それを読んでいただければ分かるように、一言も書いてありませんよ、TPPね、文章でも。だから、このときまでは全く認識がなかったと。
 そして、十月一日の菅さんの所信表明で突然TPPというのが出てきたということとしか思えないわけでありまして、いろいろそれはそうじゃないということを枝野大臣はおっしゃりたいと思いますけれどもちょっと我慢いただいて、そういう印象になっているということがこんなことになっているということを是非分かっていただきたいんです。
 皆さんは、中ではいろいろ知っているかもしれない。しかし、野党はそういう情報はありません。野党の国会議員ですら知らないことを国民の皆さんが知り得る立場にないわけですね。そういうふうな立場に置いておいて、これはきっといいことだから全部俺に任せてくれと言われても、それは無理ですよ、総理。
 今までも、二五%温室効果、トラスト・ミー、普天間、全部そうじゃないですか。任せた結果どうなったかと、見ていますよ、国民は。大事なことなんです。本当にこれ、大丈夫ですか、総理。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 基本的には、この外交交渉の問題も含めて、あるいは今回の第三次補正予算その他の課題、一つ一つみんな大きな課題だと思っています。その課題を乗り越えるために全力を尽くしていくということであって、安易に私を信頼してくれとか、そういうことではなくて、やり抜いていく覚悟をしっかり持っているということだけは御理解をいただきたいというふうに思います。

○林芳正君 もうあたかも入るという決定をされたような答弁でしたけれども、入る場合はということだというふうに思います。そんなことで引っかけようとは思いませんから安心していただきたいと思いますが。
 そこで、時間も迫ってまいりましたので、試算総括表というのを政府が出しておられます。これ何度も議論になっているやつですが、この内閣府が、これが外の方なんですね、川崎さんというのはGTAPモデルの専門家ということでやっているのが、これがまあメーンだとおっしゃっているんですが、一方で、農水省、経産省、それぞれ別々に出しておられます。
 ですから、これがメーンだと、こうおっしゃるのであれば、この前提に農水省も経産省も前提を合わせて、例えば、経産省というのは日・EUとか日中EPAとか、全然関係のないことも全部書いてやっているんですね。韓国だって今、米韓FTAの批准がどうなっているか、連日、新聞で報道されているとおりでありますから。もうここまで議論をしてあした決めるというときに、もうちょっと現実的な、農業の方は対策をこれぐらいやるというのを入れて、そして三省というか、少なくとも総理の下で農水省と経産省を交えて、一体としてこういうメリット、デメリットになりますというのをお作りになるということはなぜされないんですか。

○国務大臣(枝野幸男君) 経産省の試算についてお尋ねがございましたが、これについては昨年の段階でこういう試算をいたしましたが、その後、今のような御指摘を踏まえて、こうしたことも出発点にしながら内閣府において一括した、総括した試算をしていただいたものでございますので、あえて言えば、一番左の試算が出てきたことで経産省の一番右のものは役割が終わっているものであるということをお話し申し上げたいと思います。

○林芳正君 経産省の試算は、じゃ、もう撤回するということですか、これ。

○国務大臣(枝野幸男君) より総合的な内閣府としての試算が出てきましたので、経産省の所管範囲内におけるある部分的なものについての役割は終わったものであるということです。

○林芳正君 議論を混乱させただけだと思いますね。最初からそれをやっておけばよかったんですよ、じゃ。なぜ別々に出すんですか。最初から政府として統一見解を出しておけば、ここまで議論が拡散することなかったと思いますよ。あなた、そんないいかげんなことを、そうよくもここで言えると、こういうふうに思います。
 農水省、いかがですか。これももう役割終えていますか、この試算は。

○国務大臣(鹿野道彦君) 昨年の十月に私ども出させていただいたこの試算というものは、一定の前提を置きまして試算いたしまして、経済連携についての国民各層の議論の材料として提示したものでございます。そういう意味では、今後、この政府内におけるところの一つの考え方というものをどういう形で打ち出していくかというものは、やはり今後考えていかなきゃならないことだと思っております。

○林芳正君 先ほどから農水大臣は非常に慎重なといいますか、中身がないといいますか、そういう答弁なので、非常に決定を控えて緊張なさっておられるのかなという感じがいたしますが。経産省はああいうふうにおっしゃっているんですよね、もうこれは役割終わったと、こちらに吸収されたと。農水省は、まだこれはこれで残すと、こういうことでございますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) やはり一つの、一定の条件の下での考え方を出したわけでありますから、非常に大事な数字であると、こういうふうに私どもは認識をいたしております。

○林芳正君 それでは、政府全体としては、経産省はもう降りたけれども、農水省はこれは残って、内閣府と農業の方の、農水省の試算が二つ残るということで、総理、よろしいですね。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これ、農水省の農業への影響試算、一定の前提あります。経産省も同じでした。それぞれの役所の立場からこういう影響があるということを国民の皆様にお示しをした、その効果は私は一定のものはあったと思うんです。ただ、最新の一番横断的なものは左のマクロ経済効果分析であるということで、それを、どこかがなくなったとか、どこかの価値がこうかじゃなくて、それぞれ一応やったことはやったことでありますので、それは一定の国民の判断材料になったと思います。最新のものは、だから今マクロ経済効果分析であるということであります。

○林芳正君 ちょっと、本当に残念なのは、総理、政治主導なんてことをやれと言うつもりもないですけれども、内閣総理大臣、また閣僚の皆さんというのはやっぱり政治が主導するというためにあるので、各お役所の立場でって総理がおっしゃっちゃったらおしまいなんですよ。役所がそれぞれの立場でこういう数字を作りましたってね、あなたの内閣ですよ、これ。あなたがやれと言えばやるんですよ。なぜそういう指示をされないんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まあ言葉の問題もいろいろあったかもしれませんけれども、過去にそれぞれの大臣の理解の下で、農水省は農水省で、経産省は経産省でやったんです。私の下でこういう内閣府のものが出てきたということであります。

○林芳正君 前提をそろえて、こういう前提で各省で統一にするということを一度も野田さんになってからやっていないということなんですよ。それはその前にやったことまで言いませんよ、財務大臣でおられたからね、知っています、それは。だけれども、総理になった瞬間に、この問題は本当に大事ならデーワンで前提をそろえて一つにまとめろという指示してもよかったじゃないですか。それを今日までやらないであした決断するというのはいかにも前のめりだと思いますけど、いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) いや、内閣府のこのマクロ経済分析は各省と横断的に調整をして、国際機関とかも使っているものを使っているということですので、それをもって私は有効な資料だと、指標だと思います。

○林芳正君 では、農水省が前提としている全世界を対象に直ちに関税撤廃を行うと、何らの対策も講じないという前提はこの内閣府の試算ではどうなっていますか。

○国務大臣(古川元久君) 今の委員の御質問の部分は、内閣府はまさにこのTPPに参加する場合というのを前提に置いて、かつこれが十年を原則で、十年間で関税を撤廃すると、そういう前提でありまして、そういう仮定の下でマクロ計算をしたというものでございます。
 ですから、農水省が試算をしたのは、これは全品目について全世界で関税撤廃ということですので、そもそも条件が違うと。ですから、TPPについての試算というのは、内閣府でやらせていただいたものが政府としての見解だということでございます。

○林芳正君 いやいやいや、内閣府だって、FTAAP、TPP、TPPプラス幾つといろいろやっているんですよ。だから、それは分かっています。
 私が聞いているのは、対象の品目を全世界で直ちに関税撤廃と農水省書いていますよ、ここにね。何らの国内対策もやらない場合と書いているから、じゃ、内閣府の数字はこの前提についてはどういう前提置いて作っているんですかと聞いているんですよ。答えてないじゃないですか。
 総理、そんなことも知らないで、これが最新版ですと、野田内閣の、そうさっきおっしゃったけど、その大前提を分かってないんですか、総理。

○委員長(石井一君) じゃ、もう一度、古川戦略大臣。簡単に答えてください。

○国務大臣(古川元久君) 先ほど申し上げましたように、このTPPに参加した場合で十年で関税が撤廃をされた場合という、こういう限定で計算をしているということでございます。

○委員長(石井一君) それじゃ、野田内閣総理大臣、答弁しますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 各省横断で相談をしながら作ったということでありますので、その中には農水省とか経産省も入っているという前提で私は作られているというふうに認識をしています。

○林芳正君 さっきから聞いていると、人ごとのように聞こえるんですよ。各省がやったから多分そういうことはきちっとやっているでしょうとしか聞こえないんですよ。大前提の、対策を講じるのか講じないかについてはどうなっているんだと、この説明を官邸で受けたときにそんな質問もしてないんですか、総理。──もう総理が、総理が御存じがないということがよく分かりましたよ。(発言する者あり)

○委員長(石井一君) 林さんの発言をちょっと聞いてください。

○林芳正君 もう総理、手を挙げられないということは、知らないということですよね、要するにそんな大事なことをね。
 さっき経産大臣はこれはもう役割終わったと言ったけど、農水省はまだこれは役割終わっていないと。したがって、この前提が生きているわけですよ。だから、それが入っているのか入っていないかという極めて大事なことについて総理が御存じなかったと、よく分かりました。
 その前提で、今、古川大臣、大事なことをおっしゃいましたが、TPPですから十年で関税がゼロになるという前提で試算してありますとはっきりおっしゃいましたよ。さっきの例外の話と全然違うじゃないですか。
 総理、どうなんですか。この試算はゼロになるということになっているということと、例外を認めるということはちゃんと説明をされるべきだと思いますよ。いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 何でも試算というのは前提があると思うんです。十年間関税ゼロになった場合にはという試算を出しているというのがこのモデル。試算はこうだけど、じゃ、例外はつくれるかどうかという議論は当然あるんです、それと試算とは別に。そこは御理解いただきたいと思います。

○林芳正君 佐藤議員にもう譲りますが、そういうことを、ここで言われたから言うんじゃ駄目なんですよ。最初から、この試算はそういうふうになっていて例外はこうなんですということを口を酸っぱくして言わないと。みんな疑心暗鬼になっているんですから。
 ですから、そのことを申し上げて、本当に大事な決断ですから、いい決断をしてもらうことをお願いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○委員長(石井一君) 佐藤ゆかりさん。

○佐藤ゆかり君 自由民主党・無所属の会、佐藤ゆかりでございます。林先生に続きまして、TPPに関して質疑をさせていただきたいと思います。
 まず、このTPPに関して、やみくもに感情論に走るのは良くないと思われます。そこで、一つ私は冒頭申し上げておきたいと思いますのは、あたかも、TPPイコール貿易推進派、反TPPイコール反貿易自由化派というようなレッテルの下での議論を行うべきではないと、それをまず冒頭申し上げておきたいというふうに思います。
 その上で、このTPPというのが、今政府の皆様方のお話を伺っていますと、どうもTPPイコール通商条約という形でとらえて御答弁されている、そういう側面が強いように思うんですね。ところが、TPPというのは、はるかに通商条約を超えて国家社会全体を網羅するような、そういう話なんですよ。ですから、まずそこから認識を変えていただいて議論を深めていただかないと全く正しい結論に導くことはできないということを、まず一点目、申し上げておきたいと存じます。
 そこで、日本はシンガポールやマレーシア、インドと個別にバイのEPAを既に締結をしておりますし、たくさん実績もあるわけであります。自由化をすることは日本の経済成長率を促進する上で極めて大事であると、これはほとんど異論がある人はいないというふうに思うわけでありますが、では、TPPなのか、あるいはバイのEPAの交渉の数を増やしていくのか、あるいはASEANプラス6なのか、いろいろこの自由化協定の枠組みというのはたくさんあるわけでありますが、この辺りなぜTPPなのか。
 逆に、日本の国益にとりまして、FTAAPに向けて経済押し上げ効果が最も高い包括的な自由貿易協定の枠組みは何であるか、野田総理にもう一度認識を御確認したいと思います。何の協定が一番高いと思われますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 高いレベルの経済連携を推進をしていこうということが、先ほど御議論もあった新成長戦略に書いてございます。それを踏まえて、昨年の十一月に包括的なそのための方針をまとめまして、いわゆるバイもやってまいりました。若干、韓国などに比べると周回遅れの傾向もありましたので、バイのEPA、FTAも推進しながら、その中でTPP、今これ御議論いただいておりますけれども、何が一番有効かというのは、これはなかなか難しい話でありますけど、例えば、参加をしている国のGDPだけで見るのか、あるいはこれからの成長力、成長性を見るのか等々、それぞれちょっと観点は私は違うと思います。

○佐藤ゆかり君 総理はあと数時間後に交渉参加表明をするかしないかと、その決断をする数時間前の今のこの時点ですよ。何を言っているか分からない。FTAAPに向けて、何が一番包括的な交渉として総理がベストにお選びになるか。数時間後のことを今言っているんですよ。お答えください。(発言する者あり)

○内閣総理大臣(野田佳彦君) いや、今、質問の意味は分かりました、それで。FTAAPの道筋の中で何が一番有効かというお尋ねですね、はい。
 その道筋は、ASEANプラス3とASEANプラス6とこのTPPです。ASEANプラス3とASEANプラス6についてはまだ政府間の検討段階にとどまっているという中で、具体的な交渉が始まっているのは今のTPPであると、そういう中で我々はどう判断をするかということだと思います。

○佐藤ゆかり君 全く答えていませんね。
 要するに、数時間後に、総理が今検討をしているもの、これはTPPじゃないんですか。パーセンテージ、何%経済を押し上げるんですか、おっしゃってください。TPPに加入することによって日本のGDPは、先ほど林議員からもありましたけれども、もう一度確認させてください、日本の経済の押し上げ効果は幾らですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 数字は十年間で二・七兆円ということであります。

○佐藤ゆかり君 それで、たとえ日本政府としてこのAPECで交渉参加表明をしたとしても、それから手続上は米国の議会で承認を得なければいけない。九十日ぐらい掛かると言われております。ですから、それを経てようやく日本が交渉のテーブルに着けるのは、今から約、早くても半年後になるわけであります。そうしますと、半年後というと、大体もうTPPの大枠、条項の中身、条文もほとんど決定済みの段階で日本が最後に入るという形になるわけであります。
 ですから、今の状況で交渉参加して、日本に有利な形で条文変更の交渉をするというような余地はなく、結局、半年後に交渉参加したときに、この条文でいいですか、日本としてこれを丸のみするんですか、しないんですか、そういう二者択一の選択を迫られるに等しいわけであります。
 その指摘をした上で、このTPPですけれども、デメリットとメリットと両方ある、そして、それを総合判断して、総理は積極的に昨年からTPP推進のお話をされている。まず、デメリットの方から少し、まあ十分議論は衆議院の方でもなされたと思いますが、お伺いしたいと思います。
 まず、デメリットには、一番海外の今交渉相手国であるオーストラリアやニュージーランド、私も英文のサイトでいろいろ調べました、余りにも日本政府の情報が不足しているためです。そうしますと、いろいろもめている案件が浮かび上がってくるわけであります。その一つが知的財産権の取扱い、知財条項です。そしてもう一つは、投資の紛争解決にかかわる手段の条項、ISD条項、この二つは極めて諸外国でも異論の多い、今紛糾している交渉の項目になっている。
 そこで、まず知財についてお伺いしたいと思いますが、先ほど申しましたように、TPPというのは通商条約の域を超えて国家社会を揺るがしかねないような大きな条約の枠組みになるわけであります。例えばWTOの知財に関するTRIPS協定と比べますと、TPPの条文でアメリカが案として出している知財条項案はTRIPS協定を超えて極めて厳格で広範に規定をするものであります。
 例えば医療や医薬品、もう多くのお話出ております。社会保障分野でさえ、医薬品や医療のやり方に特許を付すことによって社会保障分野でのサービス提供すら社会政策として自由にできなくなるおそれがある、これがTPPの知財条項であります。薬価上昇のおそれ、例えばアメリカの製薬会社が特許を取れば、日本の国産品のジェネリック製品の薬品の生産が滞ってくる。そうすると、中には高価な薬価で薬を買えない患者さんが出てくるわけですね。抗がん剤やC型肝炎治療薬などは薬価が上がって、ジェネリック医薬品が入らないと薬を買えない人たちが出てくる。
 そして、もう一つ非常に驚く点は、医療の治療方法の特許なわけであります。日本の場合には、大学病院があって医局があって、それぞれ病院、医局によって患者さんを治療する方法というのは違う場合があるんです。ところが、このTPPの知財条項の米国案によりますと、それぞれの患者さんの治療方法というトータルな方法のパッケージについて特許を付すると、そういう条項が付いているわけであります。これは今交渉中のニュージーランドで極めて激論になっているテーマでありまして、こうしたことで人命が救えるのかどうかと、そういう問題になるわけであります。こうした知財条項を含むTPPについて、ニュージーランドで激論になっている例も踏まえて、小宮山厚労大臣、いかがお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員がおっしゃいましたように、知的財産分野についてはTPP協定の交渉参加九か国の国内制度、いろいろ多様で、この個別項目についての議論は収れんしていないというふうに承知をしています。
 一方で、米国の二国間FTAでは、医薬品の承認後五年間は、医薬品の承認に際し、先発医薬品の開発者が提出したデータを後発医薬品の販売許可等に使用させないという規定がございます。この期間の定めはTRIPS協定には存在をしていません。日本では、新医薬品の再審査期間を通常八年と定めていますので、実質上、この間後発医薬品の承認申請ができないために先発医薬品が保護されるというふうに思っています。
 手術などの特許につきましては、日本では、人間を手術、治療する方法は特許として認められていません。一方、アメリカでは、手術なども特許の対象とされていますが、医師などの医療行為には特許権が行使されない仕組みと聞いています。
 いずれにしましても、交渉に参加をする場合には、厚生労働省としては政府一体となって国民の健康がしっかり守られる方向で議論をするべきだというふうに考えています。

○佐藤ゆかり君 要するに、日本では、手術の方法論等についてはニュージーランドと同じで特許を課す制度になっていないんですね。これは社会政策の範疇だからそういうことであって、まさにTPPが通商条約を超えた、国家社会にかかわる、基盤にかかわる条約であるということをまず認識しなければいけませんよ、野田総理。お聞きになっておられると思いますが。
 次にもう一つ、この紛争解決手段、ISD条項ですけれども、これが極めて不評であります。配付資料を御覧いただきますと、まず配付資料の一ページ目になりますが、自由貿易協定の名称とISD条項の有無というのがありまして、WTOには投資協定におけるISD条項、すなわち一企業、投資家がその参入先の相手国を、国を相手取って訴訟できるという条項でありまして、WTOにこういう条項は存在しておりません。そして、米豪、オーストラリアとのEPAでは、オーストラリアがこれに断固として反対をして削除をした経緯があります。そして、米韓FTAではISD条項が入ってしまいましたが、韓国側がこれで激論で今もめていて、議会で承認できない状況になっていると、そういうことであります。
 日本の各国のバイのEPAはこれはあるんですが、ISD条項はありますけれども、実際に発動事例がないから大丈夫だろうと、そういう答弁を役所はするわけでありますが、実際これは相手国が違うんですね。今度アメリカが相手になってくれば、当然我々が見なければいけないのは、かつてNAFTAで何が起きたかと、こういうことを事例にしながら我々は戦略を練っていかなければいけない、そういうことであります。
 そこで、実際にNAFTAの事例を御覧いただきます。資料のページ二でありまして、NAFTAにおいてこのISD条項で一企業、投資家が国を訴えた紛争解決事例、一番最後の行で、サンベルトウオーター対カナダ、一九九九年の事例を御覧いただきたいと思います。これは、カリフォルニア州の企業、サンベルトウオーターがカナダ政府をNAFTA条約の第十一条に基づいて提訴をした案件でありまして、この損害賠償請求の金額は当時百五億ドルという非常に膨大なものであります。
 一体これは何がどうしたかといいますと、実は、カナダの州政府でありますブリティッシュ・コロンビア州政府がこのサンベルトウオーターと契約を結んで、数億万ガロンの水の輸出の契約をしたと。それをブリティッシュ・コロンビア州政府があるとき停止をしたために、利益が損なわれたということでサンベルトウオーターがカナダ政府を訴え、賠償請求として百五億ドルを請求したという案件であります。このほかにもたくさんこういう訴訟が実際にISD条項で起きているんですね。
 それで、やはりこういう水のビジネスというのは、我が国日本も既に海外に水ビジネスを推進しています。そして、国内的には、海外の外国企業が日本の北海道や長野県の水資源の近隣の土地を買収に入ってきているという問題があるわけでありますよ。
 そういう中で、NAFTAで実際に水ビジネスで訴訟が起きているという事例があるんですね。これはいかがお考えかということを農水大臣、鹿野大臣にお伺いしたいと思います。水の安全保障では、北海道や長野県で土地買収が行われております。そういう絡みから、このISD条項がもしTPPで入るとすると、我が国としてどうやって守ることができるのか。農水大臣の御見解をお願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今の森林法におきましては、外国人であっても日本人であっても、森林所有のいかんを問わず、保安林の伐採や開発の規制、あるいは普通林の伐採及び伐採後の造林の届出制度や林地開発許可制度といった規制措置を講じております。
 そういう中で、この訴えられるかどうかというふうなところは定かではありませんけれども、まさしく今申し上げたような規制を掛けておるところでございます。

○佐藤ゆかり君 このISD条項とかTPPの条約というのは、悩ましいのは、先ほど小宮山厚労大臣からは患者さんの外科手術の特許についてお答えいただきました、今、国内法でそういう特許は許されていないと。そしてまた、鹿野農水大臣からは、今国内で外国企業を差別化するような法律はないということを伺ったわけでありまして、仮に今後、日本が国内法において、これは水の安全保障にかかわる事案であるから国内法を設置して外国企業と国内企業によって水資源の近隣の土地の買収は何らかの差別化をするんだと、そういう事項を設けたとしても、これは条約ですから国内法が曲げられるんですよ。そのことを野田総理、いかがお考えですか。総理、お伺いします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まさにこれ、通商の交渉だけではなくて社会的な影響がいろいろ出る分野があるということをよく理解をしながら、踏まえながら対応していきたいというふうに思います。

○佐藤ゆかり君 国内法が条約によって曲げられるという認識について、TPPの絡みでどう思いますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 基本的には、我が国の守ってきた法律で対応できるように交渉をしていきたいというふうに思います。(発言する者あり)

○委員長(石井一君) ちょっと速記を止めて。
   〔速記中止〕

○委員長(石井一君) 速記を起こしてください。
 それじゃ、答えてくれますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国内法よりも条約の方が上位にあって、それに対応しなければいけないというその現実の中でどう対応するかということを考えるということであります。

○佐藤ゆかり君 ちょっと意味が分からないです。(発言する者あり)

○委員長(石井一君) それじゃ、速記を止めて。
   〔速記中止〕

○委員長(石井一君) 速記を起こして。
 静粛に、静粛に願います。今から答弁を求めますから。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これですね、投資協定、裁判管轄の問題を国際仲裁や判断に委ねる、そういうような場合ですね、仲裁人が入ってきて仲裁人によって決めていくということなんで、というプロセスがあるということで……(発言する者あり)

○委員長(石井一君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕

○委員長(石井一君) それじゃ、速記を起こして。
 それでは、内閣総理大臣野田佳彦君に答弁を求めます。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ISDSの話でお話しだったものですから、ちょっと私、余り寡聞にしてそこを詳しく知らなかったんで、十分な答えじゃなかったんですが。
 その中で、まさに条約と国内法との上下関係だったら、それは条約です。だから、だからこそ、我が国が守ってきたものでいいものだというものを、条約を結ぶためにそれを殺していく、壊していくということはしないというのが基本的な考え方でいくということであります。

○佐藤ゆかり君 既に日本は、仮に総理がAPECで参加表明をしても、もう米国で、先ほど言いましたように、九十日議会で承認手続掛かるんですよ。要するに、TPPの条約の中身の交渉は、我が国日本としては手遅れなんですね。もう決まった段階で、二者択一で、日本政府、これを丸のみするんですかしないんですか、どちらかにしてくださいよと、それを半年後以降に言われるしかないんですよ。
 ですから、日本の国内法というのは、条約が上位にあるわけですから、TPPで決められたものを丸のみすれば国内法は曲げなければいけない、変えなければいけない、TPPを選ばなければ国内法はそのまま我が国が管理をすると、そういうシナリオになるんですね。
 その条約のことをお答えいただかなかった。総理、これごく当たり前の質問でして、憲法に書かれていることですから私はお伺いしたまでで、ちょっとすぐにお答えいただかなかったのは非常にこれはある意味驚愕です。ここで決めるということは、こういうことも分からないでお決めになるということは余りに国民軽視ではないだろうかな、非常に大きな問題を感じたわけであります。
 さて、それで、この水ビジネスの件は、今我が国日本でもかかわっていますから少し掘り下げてお伺いしたいと思いますが、このいわゆるISD条項の賠償リスクについて、ISDというのはインベスター・ステート・ディスピュート、ステート、国に対する訴訟なんですね、というふうに理解をされているわけでありますが。
 ステートの定義についてもう一度確認をしたいと思います。連邦政府、アメリカやカナダによっては、連邦政府があって、ブリティッシュ・コロンビアのように州政府があるわけでありますから、ステートに日本の地方自治体が入らない、まあ当然入らないと思いますが、確認をさせてください。

○副大臣(山口壯君) ステートは締約国を指すと解釈しています。

○佐藤ゆかり君 その確認ができましたので、そうすると、この水ビジネスの例にもありますように、これから地方自治体が我が国日本では、まあ復興予算も付けます、企業立地もこれからやっていかなければいけない、円高で空洞化対策もやっていかなければいけない、いろいろ地方自治体が受けた予算や税制を駆使して企業誘致をしていかなければいけないんですね。
 そのときに、様々な安全性の角度から規制強化をするような自治体もあれば、あるいは企業誘致で様々な行政で企業、外国企業も引っ張ってくる事例というのも出てくるわけでありますが、その中で特に空洞化対策でいえば、やはり政府発注、公共事業の発注などにおいても地元の業者を優先的に発注するような事例というのはどうしても出てくると思うんですね。
 そうした中で、このISD条項というのがかかわってきますと、当然ながら、外国企業は、この地元優先の事業、政府調達が不公平じゃないか、我々の利益が損なわれたといって、まず日本の国が訴えられますよ。そして、こういう地方自治体でやる様々な地方行政措置について、国が一つ一つそれをモニターしてリスク管理することはできないんです。でも、実行するのは地方自治体ですよ。でも、訴訟を受けるリスク管理をするのは国なんです。これをどうマネージをしていくとお考えか、総務大臣、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(川端達夫君) 現在も、もう先生よく御案内だと思いますけれども、アメリカは入っておりません、アメリカとはやっておりませんが、諸外国と十五の投資協定、九つのEPAを締結しております。この中のものに関しては、ISDSの手続を組み込むということで協定を結んでおります。
 そういう意味におきまして、総務省の立場だけで申し上げますと、そういうことで要するに外国との差別をしてはいけないということが全部含まれておりますので、そのルールに基づいた部分でしっかりとそれが遵守されるということを関係省庁と連携をしながら徹底をしているところであります。その延長線上にあるということであります。

○佐藤ゆかり君 特にこの国内政策において、先ほどから、社会保険の分野でもそうですし、水ビジネスの分野でもそうです、そして政府調達の分野でもそうですが、やはり地方自治体の努力と国の訴訟リスク、これをどう管理していくかと。これは到底できない話でありまして、そういう中でISD条項の方が日本の国内法より優越してくるわけでありますから、非常にこれはある意味危険で、時期尚早な判断というのは、野田総理、是非避けていただかなければいけないなというふうに思うわけであります。
 先ほど、衆議院の予算委員会の御答弁で枝野経産大臣もおっしゃっておられましたが、国内法でこういったものをしっかりと守るんだから、例えば先ほどの御答弁では、遺伝子組換え食品について、あるいはBSEの食肉の問題について、輸入を強要されれば国内安全基準できっちりと守るから大丈夫なんだと、そういう、枝野大臣、御答弁されておられましたね、先ほど、午前中。
 無理なんですよ。国内法がこのISD条項の劣位にあるわけですね。ですから、そんなことはとっても無理なことであって、午前中の御答弁は余りに無理であると、問題であるということを申し上げておきたいと思います。
 要するに、このISD条項というのは治外法権で……(発言する者あり)

○委員長(石井一君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕

○委員長(石井一君) 速記を起こしてください。
 質疑を続行してください。

○佐藤ゆかり君 要するに、国内法は曲げられる、治外法権を含む、そういうISD条項を含むTPP協定だということを明言をしておきたいと思います。
 さて、時間もないので次に移りたいと思いますが、こうしたデメリット、社会保障の問題あるいは農業の問題、いろいろ挙がりました。水ビジネスの問題もありました。そのデメリットに対してメリットをできるだけ大きくして、そしてトータルで日本経済として前に進んでいくにはどうしたらいいかと、そういう議論が大事なわけであります。
 そこで、先ほど、冒頭のお話に戻りますが、総理にお答えいただきましたし、また衆議院の予算委員会で総理は繰り返しおっしゃっておられました、このTPPがFTAAPに向けてのベストのシナリオなんだと、そしてこれで約十年間で二・七兆円実質GDPを押し上げると。〇・五四%実質GDPを押し上げるという数値が内閣府のGTAPモデルの試算結果で出ているわけでありまして、これが総理の考えのよりどころになっているというふうに認識をしているわけであります。
 そこで、このパネルを御覧いただきたいと思いますが、(資料提示)この同じ内閣府のGTAPモデルなんですが、残念なことに内閣府の中で独自にこのGTAPモデルを回せる人がいないということで、外部の川崎研一さんという方が唯一政府の委託でやっていると。そういう政府の委託で外部の人が試算したものにのっとって総理がこれから数時間後にTPP参加表明をするかどうかということをやるという、そういう次元の話を私たちはしているわけでございます。
 このパネルを御覧いただきますと、包括的自由貿易協定というのはいろいろな種類があります。FTAAPに向けてTPPが右のコラム、赤ですね、そして日中韓もありますし、ASEANプラス3、ASEANプラス6。要するに、結論からいいますと、このASEANプラス6の青の部分とTPPの赤、下のグラフで御覧ください、日本、シンガポール、オーストラリア、米国。全て経済押し上げ効果が高いのは青い方、ASEANプラス6であってTPPじゃないんですよ。それで、一番右の米国だけアジアに入っていないわけですから、どうしてもTPPが欲しいわけですね。ですから、アジアはもう既に、日本も、全てEPAを組んでいますから、そのベースでどんどんASEANプラス6に向けて広げていけばTPP以上の経済効果が得られるんですよ。これが内閣府の使っているGTAPモデルの結果でもあるんです。
 ですから、このデメリットを乗り越えるために包括的にメリットを引き出して日本経済を成長軌道に乗せていくということであれば、なぜASEANプラス6を選ばないんですか。総理、やはり政治というのは、国民の痛みを、デメリットの方を乗り越えて、それでも成長率が高いんだからやっていこうと、そういう議論が必要なんですね。ですから、それであるならば、やはりTPPよりもより成長率が高い、ベストと思われるような包括的自由貿易協定を選ぶべきではありませんか、いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) いや、ASEANプラス6を私、別に否定しているわけじゃありませんし、FTAAPへの道筋の中でASEANプラス6もASEANプラス3もTPPも位置付けられているんです。
 政府間の今まさに検討段階となっているのがASEANプラス6で、TPPは具体的に交渉が始まっているという中で、今既に始まっているものについて我々はどう今判断するかということであります。
 いずれにしても、まだ始まってないことでありますので、もちろんそれは、始めるとかいろいろありますよ。これ、全部二者択一ではないと思いますので、これは択一の話ではないというふうに思います。

○佐藤ゆかり君 始まってないから大丈夫だとか、数時間後に発表するという人がそんな答弁を今の時点でしているというのは到底考えられないんですが。
 要するに、今の段階では、野田総理は、このASEANプラス6とTPPを比べて、日本の国益に照らして、アメリカの国益だったら明らかにTPPの赤線の方が青の棒線より高いんですよ。これはアメリカの国益であって、日本の国益とは違う。そして、日本の国益で、御覧ください、青線の方が高いわけですよ。そうしたらASEANプラス6で、あるいは中国が後から入ってくるかもしれない、当面中国は来ないかもしれない、そうしたらASEANプラス5で、そして個別に広げていけばいいではありませんか。
 そして、あたかも、非常に問題の深い知財条項やISD条項という、このデメリットの方を強要してまでなぜこの機にTPPを広げるのか、その点をもう一度お伺いします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 優先順位がどっちかではないと思うんですね。ASEANプラス6ももちろん可能性があるし、そういう試みには当然日本だってかかわっていくわけでありますけれども、現に始まりつつあって、そして大まかな合意に今達しようとしているTPPについては、一つのやっぱり判断の時期が来ているということであります。
 これは、例えばGDPとか見て、関係九か国の中ではアメリカが飛び抜けて大きい存在で、ほかは現段階では小さいかもしれませんけれども、でも、ベトナムとかそういう成長力はあるし、特に中南米の国々のこれからの成長も期待をされる中で、将来のまさに成長を取り込んでいくということも必要だというふうに思います。

○佐藤ゆかり君 要するに、この包括的な自由貿易協定というのは、広げれば広げるほどメリットが増えるものでもないんですね。これは、今のこのパネルが示したとおり、世界全体に仮に貿易協定を広げると逆に経済効果は縮小してくるんです。ですから、ある一定の範囲で止める、そして対象となる相手国をきちっと厳選する、そういう中で戦略的に日本の国益を推進する自由貿易を広げていかなければいけない。
 総理、これで、今回、今日、参加表明はこの時点ではとても考えられない。表明できないというふうにおっしゃっていただけませんか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) いずれにしても、この後、政府・与党の会議あるいは関係閣僚委員会の議論を踏まえて結論を出していきたいというふうに思います。

○委員長(石井一君) 以上で林芳正君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────

○委員長(石井一君) 次に、西田実仁君の質疑を行います。西田実仁君。

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 本日は、午前午後とこのTPPに関しまして集中審議が展開されております。様々な重なりはなるべく避けまして、あえてここで申し上げたいのは、この一国の通商政策というのは、TPPを始めとした貿易のルールを決めるということが一つの柱であることは間違いありません。もう一つの通商政策の柱は、通貨、通貨外交あるいは通貨戦略というもののこの両輪があって初めて通商政策というのは成り立っているわけであります。しかし、この通商政策のもう一つの柱である為替についての議論がいま一つ掘り下げられていないということから、私はそこを是非お聞きしたいと思います。
 いまだかつて、まだ政府からこのTPPに関連して、どのようなもう一つの柱である通貨戦略を取るのかということについてはしっかりとした提示がなされていない、そういう中でTPP交渉に参加するのは私は拙速であると、このように申し上げたいわけであります。
 最近の円高、ここ数年でございますけれども、これは単なる円高ではなく、超円高というふうに言われているわけであります。それは理由は二つあります。一つは、例えばOECDの購買力平価でいえば百十一・四円というところに対しまして、現在の水準はもう四割割高になっているということ。そしてもう一つは、このリーマン・ショック後の三年間見ただけでも、日本は主要各国に対しまして最も円が切り上がっております。この三年間で、円は三六%上昇、スイス・フランは三〇%、人民元は一・四%、ドルは二・五%逆に下落をしている、ユーロも三・五%下落し、韓国ウォンも六%下落していると、こういう状況であります。
 野田総理は、さきのカンヌ・サミットにおきましては、こうした超円高となっている為替につきまして、為替介入について説明するとともに、為替レートはファンダメンタルズを反映すべきであって、過度な動きや無秩序な動きを引き起こさないよう通貨安定のための協力の強化が重要と言われております。
 そこで、最初にまずお聞きしますのが、野田総理に、カンヌ・サミットではこの通貨安定のための協力の強化についてどのような進展があったのか、手短にお話をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) さきのカンヌ・サミットで改めて確認されたことでありますけれども、これ主に新興国を念頭に置いておりますが、根底にある経済のファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムにより迅速に移行し、為替レートの柔軟性を向上させるとともに、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避け、通貨の競争的な切下げを回避することへのコミットメントというのを確認をいたしました。こうした合意によって、世界経済の安定的な成長促進をしつつ通貨の安定を図ることについて、一定の合意、成果があったと思います。
 なお、先般の我が国の介入については、これは過度な動き、無秩序な動きがあったということの判断の下で、日本経済の下振れリスクにも対応するためという意味で介入をしたという説明を併せて行ってまいりました。

○西田実仁君 そうはいっても、余り効果はなかったということであります。
 今晩から向かわれるAPECにおきまして、米国のオバマ大統領ほか各首脳との個別の会談もあろうかと思いますけれども、例えば総理はオバマ大統領との個別会談において、通貨安定のための協力の強化についてどのようなメッセージをお伝えするつもりでありましょうか、お聞きします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) APECでは、アジア太平洋地域の貿易・投資、こういう課題に対する議論が中心になると思います。その中でも、域内経済の安定的な成長促進に資するという意味で通貨についての議論もしていかなければいけないと思いますが、これはG7でもG20でもお互いに確認をしてきたことがあります。その辺の確認事項を改めて議論するということがベースになるのかなというふうに思います。

○西田実仁君 そういう曖昧なことでは困るんですよ。今パネルを出させていただきますけれども、TPPということが議論になっている今、この通商政策のもう一つの柱である通貨戦略についてきちんとした戦略を立てていただかなければ、日本の国益を大きく失うことにもう既になっている。(資料提示)
 この上を見ていただきますと、TPPのGDP押し上げ効果、今日もいろいろ議論がありました。内閣府の調べでは、十年間で関税が撤廃されるという場合には二・七兆円のGDP押し上げ効果があるということであります。下の方を御覧いただきますと、この三年間、いわゆる超円高と言われる中にあって、日本が失った輸出市場、これは私の試算では七・八兆円あるんです。
 それはなぜこういうふうに調べたかといいますと、その一番下のところに過去三年の日本の輸出シェアというのがあります。二〇〇八年、年間平均の対アジア、アメリカ、EUそれぞれに対する輸出シェア、それぞれの地域、国からしましたら日本の、対日輸入シェアということになりますが、それがこの直近の本年一月から八月までの八か月間でシェアがどのぐらい下がっているのか。例えば、対アジアに対しましては一一・四%が一〇%に下がっている、対米国に対しては六・六が五・四%、EUに対しては四・八から四・三%に下がっているわけであります。このシェアの差額分を直近一年間の輸入額を掛け合わせて数字をはじき出して足し合わせていくと、七・八兆円というこの失った輸出市場の額というのがあるわけであります。
 もちろん、TPPのGDP押し上げ効果はGDPの押し上げ効果でありますし、下の方は輸出の失った額であります。しかも、円高だけで当然のことながら全てこれを失ったとは言いません。しかしながら、もうよく御存じのとおり、この三年間で円高が進めば進むほど、それぞれの地域、国の対日輸入シェア、日本からすれば輸出シェアというのが下がっているというパラレルな関係があることもこれまた事実であります。
 総理、私は、このTPPで二・七兆円GDPを押し上げるという効果、これはいろいろ議論ありますけれども、しかし一方で、通商政策のもう一つの柱である通貨戦略を取ってこなかったがゆえに既にこの三年で七・八兆円も輸出市場を削ってしまっている、なくしてしまっているという、これは大変に重い。
 私は、このTPP交渉をどうされるのか存じ上げませんけれども、これ以上の円高を防ぐための通貨協議というものを直ちに日本は行わなければならないというふうに思っております。アメリカも明確に通貨戦略は持っている、金融の大幅緩和によってドル安を放置する戦略。中国もそうです。中国は、対ドルに対しましては米中戦略対話の中で毎年五%ずつぐらい引き上げている。しかし、日本円に対しては逆に人民元は切り下げてきているわけでありまして、アメリカも中国も明確な通貨戦略は持っている中で、日本だけが何も通貨戦略がないものですから、なすがままに円無策の中でこういう失った市場があるわけであります。仮に日米間で円・ドルレートを安定させられれば、当然人民元は、ドルに対して今申し上げましたように切り上がっておりますので、人民元は対円に対しても自動的に切り上げられていくことになるわけであります。
   〔委員長退席、理事川上義博君着席〕
 そこで、野田総理にお聞きします。あしたからのAPECでの個別会談等において、仮にTPP交渉入りを宣言していくのであれば、同時にまず日米間で円・ドルレートの安定協議を開始するよう米国に迫るべきだと思いますけれども、いかがでありましょうか。総理に聞いております。

○国務大臣(安住淳君) 確かに、今のレートは超円高であるという認識は私も同じであります。ただ、戦後の、先生、歴史を考えれば、三百六十円からスタートして、すさまじい円高の中で我が国経済は危機的な状況を何度も迎えました。しかし、それはその時々の外的要因も非常に多うございました。ニクソン・ショックもそうでございますし、またプラザ合意もそうでした。現在、私どもは無為無策という御指摘もあるかもしれませんけれども、これまでこの十年間、自民党政権下から含めて六度の為替介入も行ってきたことは事実であります。
 しかし、世界の大きな潮流は、先ほど御紹介いただきましたが、スイスのフランを見ていただければ分かるんではないでしょうか。スイスが健全な経済を維持しているというよりは、緊急避難的にどうしても、EUが悪くなればフランはそういう形で、スイスのフランの方に価値が高くなってくると。しかし、スイスは経済規模が余り大きくないですから、今ああいう政策を取っておるわけですね。
 しかし、日本のような言わば世界の三大通貨と言われるものの一つになっている今、中で、アメリカにはアメリカの厳しい雇用状況や経済指標があります、またヨーロッパもヨーロッパで厳しい状況です、御存じのとおりです。野田総理が財務大臣時代、大震災の後に協調介入ということで、これはヨーロッパもアメリカも理解をしていただいて共に為替介入をさせていただきました。その後は、しかし、残念ながら同じような認識になかなか立てなかったんですが、私は、私の国益を守らなければならないという立場でこの過度な円高に対しては介入をこの間行ったわけでございます。

○西田実仁君 そういうような事後的な円高対策のことを言っているんじゃないんですよ、私は。介入をしてどうのこうのという話じゃない、どうせ効果ないんですよ、すぐに時間がたてば。そうじゃなくて、きちんとした通貨戦略を立てていく、安定をさせていくということに対する戦略を立てていく必要があるということを申し上げているわけであります。太平洋通貨の安定なくして太平洋貿易の拡大も太平洋経済の発展もあるわけないじゃないですか。
 日本とアメリカとの円・ドルレートを安定化する協議を始めていく。ドルとほぼ一対一である豪ドルとかあるいはカナダ・ドルも入れて、四か国の通貨協定を結んでいく。そして、その後、日中韓の例えば東アジアの通貨会議を行うことによって、いずれ中国の人民元も含めて、これをアジア太平洋地域の通貨協定をつくっていく。例えばこういう通貨戦略をきちんと持っているかどうかということが今問われているわけであります。単なる事後的な円高対策がどうのこうのということじゃないんです。
 総理、どうですか。総理にお聞きしています。総理に聞いています。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これはG7やG20、あるいは様々なバイの会談においても、今、世界経済が欧州の危機を中心にちょっと減速しかねないという状況の中で、世界全体が、先進国も新興国も含めて、持続可能で力強くバランスの取れた成長をどうするかと、そのお互いのマクロ経済政策の確認をする中で、通貨の問題についても当然のことながらこれまでも議論をしてまいりました。
 その際に、当然、これは例えば日米だけで議論をしていても、ドルと円の関係はもちろんあります、ただ一方で、じゃ、ユーロをどうするのか。ここにも影響を受けるわけで、その関連の中では、欧州危機の問題に我々がどうかかわっていくかという議論にもあると思いますが、いずれにしても、通貨をベースにしながら様々な今の経済についての議論は大いにやっていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 先ほどからずっとルールメーキングがどうだとかリーダーシップがどうだとか日本のことを言っていますよ。しかし、まさにこういう、今一番日本が困っている超円高に対してどうやって為替を安定させるかということについてこそ、まさにルールメーキングのリーダーシップ取るべきじゃないですか。何でそれができないんですか。
 総理、今、この国際通貨、新しい秩序をつくろうという動きがいろんなところから出てきています。今年はブレトンウッズの四十周年、ドル基軸の体制が揺らぎ始めていると言われている。ユーロも大変に問題である。
 こういう中にあって、例えば二〇〇九年の三月には中国人民銀行の周総裁が国際通貨体制の改革に関する考察を発表して、SDRというのを基軸通貨とした提言を行っている。御存じですか。さらに、同年九月には、国連がドルに代わる新しい国際通貨体制の導入を提案している。さらに、去年十一月にはバーナンキFRB議長が、為替レートの変動を容認している国ほど調整負担が重く、変動を抑制している国は負担が軽い、こうした不均衡は持続可能ではない、新たな国際通貨体制構築が望ましいと。こういう提言が各地で行われているわけであります。日本は何も提言していないじゃないですか、何もリーダーシップ取っていないじゃないですか。
 この超円高という大変な問題、この問題に対してどうリーダーシップを取って、世界の中で、円が例えばドルと、例えば先ほど申し上げた四か国の通貨で、あるいはアジア太平洋に、TPPからFTAAPに広げていくんでしょう、貿易で。だとしたら、この通貨の協定についてもリーダーシップを取って今こそ言うべきじゃないんですか、総理。そういう気概はないんですか、総理。総理にお聞きします。

○理事(川上義博君) 安住財務大臣。通貨の問題ですから。

○国務大臣(安住淳君) 済みません。
 先生、周総裁とも、また例えば中国の王副総理、これは財政担当の方ですが、私は一週間前にそのお二人ともお会いしています、総理もお会いしています。またさらに、バーナンキさんとも私も三度も会ったし、そういう点では、G7でもうさんざんそういう話はあるんです。しかし、現実に進んでいるかというと、国益がぶつかり合って、なかなかこれ大変でございまして、SDRの問題も、今の枠に、例えば直截な話をすれば、じゃ人民元をどうするかという話はそれぞれ思惑があって、ワシントンでも、実際の公式な会議では出ませんでした。
 我が国もそういう手は、通貨の安定に対しては再三再四にわたって実体経済を反映したものにすべきだということで様々なことをやっています。あしたもIMFのラガルド専務理事ともお会いしますので、先生の御意向は私、十分分かっているつもりですが、努力をしているということも分かっていただきたいと思っております。

○西田実仁君 全く言い訳だけなんですよ。貿易を自由化してアジア太平洋へ広げていこうというときだったら、通貨の安定協議についても日本がリーダーシップを取って言い出せばいいじゃないですか。何でそれができないんですか、野田総理。総理のリーダーシップですよ、ここは。世界の中で日本がどうするかという一番皆が困っている為替の安定についてのリーダーシップを是非取るよう。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 通貨の安定に向けた議論はこれまでも積極的にかかわってまいりました。これからも大いにやっていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 アジア太平洋通貨協定を、じゃ、結ぶためのリーダーシップを総理は取られるんですね。総理にお聞きします。総理にお聞きします。

○国務大臣(安住淳君) ですから、EUの状況を見ていただければ本当にそういう、例えば、その究極の話をしていくと単一通貨ということにもなるわけですが、EUは今その痛みにもがき苦しんでいるわけです、先生。
   〔理事川上義博君退席、委員長着席〕
 ですから、簡単になかなかその通貨を安定させるというのは、変動相場制でこれだけ金融市場が発達した中では極めて難しい中で国益というものをやっぱり求めていかなきゃいけない、私はそう思います。(発言する者あり)ですから、それはどの政権であっても、まあ言い訳するなという話ありますが、前政権下でも大変な苦労をしながらやってきているんではないでしょうか。

○西田実仁君 私は、前政権だとか現政権の話をしているんじゃないんですよ。ですから過去三年間というふうにちゃんと言っているじゃないですか。我々の与党のときも入っているんですよ。
 だから、日本国として、今まさにTPPとかこういう貿易ルールを決めるという通商政策の大きな柱を決めようとしているときでしょう。そうしたら、もう一つの柱のこの通貨戦略というものをきちんと打ち立てなきゃいけないんじゃないかと。アメリカも中国もみんなやっているのに、なぜ日本だけがいつもこんな受け身でいなければならないのかということを問題意識として持っているわけであります。
 しかし、今お話をお聞きしていても、結局のところ、そういうリーダーシップを発揮しようという、そういう気概も全く見られません。受け身でありますし、言い訳しかしていないという状況でありまして、こういう通貨政策なき通商政策というのは、これじゃもう幕末の不平等条約と同じになります。国益にはかなわない。なぜかくも交渉ポジションが弱いのか、もう不思議でならない。
 それをたどってまいりましたところ行き着いたのは、私は、今月二日に、内閣官房主催、経済産業省企画のTPP討論会における枝野経産大臣の発言でございました。その中で、インターネットでも放送されております、枝野大臣はこの討論会において、米国にとって既に日本は魅力的な市場ではないというのが客観的な状況であると言われております。ここで改めてその御発言、確認させてください。

○国務大臣(枝野幸男君) 御承知のとおり、日本は人口が減少にもう既に入っております。それから、残念ながら経済の成長トレンドというのも、例えば高度成長期などと比べると大幅に下がってきております。そうしたことの、国内市場が縮小しているということは間違いない客観的事実でありまして、アメリカの立場から見れば、しかも成熟した市場、マーケットになっています。そうしたことを考えれば、今後新たな展開ができるという意味での魅力という意味では、人口が増えていたり、また発展途上国でこれから成長の伸び幅の大きいと思われる国に比べて相対的に魅力が少ないというふうに私は思っております。

○西田実仁君 野田総理も同様の御認識でしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 枝野大臣のその討論会での御発言というのは、今御本人もお話しになったとおり、日本の国内の人口が減ってきている分、国内市場が縮小傾向にあるという、いわゆる客観的な状況をお話をされたと思うんです。一方では、私、総理という立場では、これはまさに成長戦略を加速させていくこと、そして開かれた復興を通じて日本経済の活力を高めて魅力ある日本にしていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 ということは、総理も同じように今や日本は米国にとってはもう魅力的な市場ではないという認識、しかしそれを何とかしていきたいと、こういうことでよろしいでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 先ほど申し上げたとおり、国内市場が縮んできているという事実を大臣はおっしゃったと思うんです。私は、魅力ある日本をその上でつくっていきたいということであります。

○西田実仁君 要するに同じ認識だということを今総理は認めました。私は、そうした認識を持つこと自体が間違っている、そういう間違った認識を持ってTPPの交渉に臨むべきではないというふうに思います。なぜならば、客観的な事実とまず反するからなんですよ。
 一つには、日本市場は依然として中国の九二%、九三%という市場をちゃんと規模としては持っています。人口が減少したからといって急激に日本の市場が縮小するわけではない。産業の空洞化ということも言いますけれども、それは国内市場が縮小したというよりも、結局、先ほど来申し上げた、政府の無策による超円高で日本の輸出競争力が低下したからなんですよ。あくまでも輸出産業の話であって、輸出産業ではない多くの企業、圧倒的多くの企業は、国内の新しい需要を掘り起こしながら懸命に新製品を開発して頑張っているんですよ。農業も同じです。サービス業もまだまだ期待できる。
 そもそも、アメリカにとって日本が魅力的な市場でなかったら、なぜ、今年二月、日米の経済調和対話において、情報通信から農業、医薬品その他数多くの関心事項が列記されているんですか。そもそも日本はもうアメリカにとって魅力的な市場ではない、だからアメリカの戦略に乗って早くこのTPPに入らなきゃいけないという、そういうところから交渉ポジションが弱くなってしまって、通貨戦略についてもリーダーシップが取れない、貿易のルールを決めるにしても弱腰でポジションが弱くなってしまう、こういうことになってしまうんじゃないんですか。
 ですから、そもそも日本が米国にとって魅力的な市場ではもはやないんだという客観的な事実、これを基にして交渉になんか臨むべきではないと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 済みません、私は人口が減少してきて国内市場が縮んでいく傾向があることは申し上げましたけど、私は魅力ある日本をつくりたいということを申し上げているんです。魅力がなくなったからアメリカにこびを売ってTPPに入るという決断は全く違います。
 これは、我が国にとって、アジア太平洋地域においてどういう我々は存在感、プレゼンスを示すのか、役割を果たすのか、あるいは、まさに現状に甘んじるのか、未来を切り開くのかという視点の中での大局的な判断をしていかなければいけないとは思っておりますけれども、今申し上げた理由で、米国にこびを売るためとか、そんなことのために判断をしようとは全く思っていません。

○西田実仁君 このTPPの交渉をめぐる議論の核心はまさに私はここにあると思っているんですよ。枝野大臣が、先ほども御自身も言われましたけれども、米国にとって既に日本は魅力的な市場ではないという、そういう認識の下から出発をしようとしている交渉、これは大変に危険ですよ。米国にとって日本はいまだもって魅力的な市場なんですよ。
 ですから、日米経済調和対話、ここに端的に表れているように、アメリカのシステムやルールを日本にも適用して市場開放を迫って、日米で合意したルールをアジアに広めていくと、それが狙いだというふうに思います。それで国民の皆さんは皆心配している。
 例えば、日米経済調和対話における米国側関心事項に対して日本はどのように対応するのか、これをもっともっと情報公開をして開示をしていかなければ不安でしようがない。これでは、今のままではTPP交渉で様々の分野でいろいろな議論が始まったときに日本国政府がどう対応するのか分からない。そこで国民の不信は募るばかりということになるわけであります。
 そこで、具体的にお聞きをしたいと思います。たくさん日米経済調和対話の中にはいろんな項目があります。一例として共済の問題を挙げたいと思います。
 この対話では、日米経済調和対話ですね、では、共済と民間競合会社の間で規制面での同一の待遇及び執行を含む対等な競争条件を確保すると日米経済調和対話の中には書かれているわけであります。この狙いは、恐らく農協における共済部門の切離しではないかと、これは推測であります、書いてはありません、推測です。
 しかし、日本政府はこの日米経済調和対話での日本側の最新状況として何を報告しているのか。それは政府が進めている規制・制度改革の取組を報告しているんです。そこでは、日本が今こういうふうに取り組んでいますよとアメリカに報告した規制改革の中には、農協の農業関係事業部門の自立、すなわち信用・共済部門の農協からの切離しということを報告し、アメリカにもそれを伝えているわけでありますね。日米経済調和対話と、それを受けての規制改革、規制・制度改革分科会ですか、これはもう一体なんですよ。
 ということから私はお聞きしたいんですけれども、この共済部門の切離し云々という、その中身そのものよりも、私が強調したいのは、民主党の今の進め方というのは、国民に余り多くを語らない。しかし、アメリカ側の要求にこたえてTPPに受け入れてもらえる環境づくりを、実は国民に知らされないまま着々と進んでいるのではないのかという疑念が湧くことであります。
 今一例として挙げました共済につきまして農水大臣にお聞きしたいと思いますけれども、野田政権ではこうした共済に関する米国から示されている関心事項にどのように対応する準備をされているのか、お聞きします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 日米経済の調和対話におきまして、アメリカ側から共済と民間競合会社の間で規制面で対等な競争条件を確保することというものが提起されておると、今の先生のお話のとおりであります。
 ただ、TPP交渉で共済事業が議論されているか否かは承知いたしておりません。一つの参考といたしまして、米国が過去に締結した米韓のFTAでは、協同組合が実施する保険事業について、同種の民間保険と同一のルールを適用すべき旨を規定したルールはあるということは承知をいたしております。

○西田実仁君 そういう検討は、しかし、TPPでは今なされていないかもしれませんけれども、当然のことながら、アメリカ側の関心事項として具体的に挙げられているわけですね。
 そういうことに対して日本はどういうふうに対応するのかということを心配する国民に対して、あるいは、十一月四日に今度は外務省が内閣官房と一緒に主催した討論会で玄葉大臣は言っていましたよ。九十日というアメリカの議会に通知する前のプラスアルファのところは二、三か月だと言っていました。となると、じゃ、この二、三か月の間に、この共済部門を例えば農協から切り離すということについて、何らか国民に示し意見を聞きながら決定をしていくということですか、農水大臣。

○国務大臣(鹿野道彦君) 具体的にTPPの共済事業交渉で共済事業が議論されているかというふうなことはまだ定かでありませんので、そういう中で今後このTPPについてはどうするかということが決められていくわけでありますけれども、そういう中で対処していかなきゃならないものだと思っております。

○西田実仁君 ほかにもたくさん心配なことがあるんですよ。例えば、元々のオリジナルなP4という四か国で議論をしていたときには入ってなく、アメリカが関心を持っている項目が三つありますけれども、そのうちの一つは労働です。
 この労働についても、是非今日は小宮山大臣にもお聞きしますけれども、これまでの交渉では、貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきではないというふうに定められている。一見、労働者の権利が守られるという意味で何ら問題はなさそうであります。しかしながら、資料を外務省でも報告をされておられますけれども、米国が今後条文案を提案する段階であり、何が飛び出してくるのか分からないということは認めているんですね。
 そこで、手掛かりとして、アメリカが二〇〇六年、日米投資イニシアティブ報告書に記載し、いまだ実現していない労働法制というのがあります。四つほどその二〇〇六年には挙げておりますけれども、今日はそのうち一つ、解雇紛争への金銭的解決の導入についてお聞きしたいと思います。
 これは、日本では解雇が不当かどうかということについては裁判で決着するしかないということを改めて、金銭による解決、すなわち裁判外での紛争処理、示談による解決ということを制度的に導入しようというのが狙いですよね。これは、解雇がより容易となりはしないかと心配するのも当然だと思います。
 外務省の資料によりますと、この労働法制については、TPP協定交渉参加を検討する際に我が国にとり慎重な検討を要する可能性がある主な点は特になしとなっているんですよ。特になしじゃなくて、アメリカが具体的にもう二〇〇六年の段階で日本に対してそういうことを求めているわけですよ。ですから、アメリカとの交渉が主になるTPPの協定交渉においてこうしたことが提起されたときにどうなるんだろうかということを心配するのは当然でありまして、そういうことをきちんと説明しなきゃいけないと思います。
 厚生労働省としては、こうした要求がもしアメリカからあった場合にはどのようにするんでしょうか。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員がおっしゃいましたように、アメリカがその二国間でやっている日米投資イニシアティブにおける議論の中でそのような主張をしているということは承知をしています。
 ただ、これも委員が御紹介いただいたように、現在までのTPP交渉の中で各国の労働法制の緩和を求めるような議論は行われていない、そして、労働について今交渉で扱われている内容は、貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定めるとされていると認識をしています。
 その上で、仮に交渉に参加をする場合にそのような要求があった場合には、日本での労働条件がしっかり守られるように対応すべきだというふうに考えています。

○西田実仁君 ということは、仮にそういう要求があった場合にはそれは突っぱねていくと、これは絶対に譲らないというふうに考えているんですね、お聞きします。

○国務大臣(小宮山洋子君) これは、TPPは当然のことながら交渉事でございますので、確かにアメリカは強い力を持っているかもしれませんが、多国間で交渉をしていて、労働法制が各国それぞれ違う中でアメリカの主張だけが通るとは思っておりません。その中でしっかりと守るように日本としては主張をすべきだというふうに思っています。

○西田実仁君 つまり、じゃ日本国政府としては、仮にこういうことが出てきてもそれは絶対に譲らないと、こういうことでよろしいんですね。

○国務大臣(小宮山洋子君) これは政府全体として対応していくことですが、厚生労働省としては、ここは譲らないように対応していきたいと思っています。

○西田実仁君 じゃ、総理にお聞きします。
 総理は、今の議論をお聞きしていて、これはやはり日本国政府としては譲るべきではないと、そう考えておられますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 基本的には、対応可能なもの、困難なものをしっかり見極めて個別の交渉をするわけでありますが、今のお話については、日本のしっかりと主張をしていかなければいけないテーマだと思います。

○西田実仁君 じゃ、譲らないということですね。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国益を踏まえて対応していくということであります。

○西田実仁君 国益というよりも、国民の労働法制に関することですよ。
 今私が申し上げたこの解雇、日本においては今までは裁判所で決めることになっている、これを裁判紛争への金銭的解決の導入というのをアメリカが言っている、こういうことを認めるんですかどうですかということを聞いているんです。それは国益ですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国益というか、日本がずっと尊重してきたルールの問題であります。それはしっかり守っていくということであります。

○西田実仁君 しっかりルールは守っていくということを言われました。
 こういう、私は今、共済の話と労働法制の話をたまたまというか例として挙げさせていただきました。しかし、例えば、このTPPでは交渉だから何が出てくるのか分からない、今の段階で慎重に検討すべき項目は特になしというようなことを、二十一の分野についても随分ありますよ。ありますけれども、確かに交渉だから何が出てくるのか分からない、だからといって、私たちはそれを全て白紙委任するわけにいかないじゃないですか。
 ですから、それぞれの分野ごとにもう出ているわけですから、二十一の分野もそうかもしれないし、しかも日米の経済調和対話から具体的に、アメリカの関心事項として出てきていることも具体的にもうあるわけですから、それぞれについて日本国政府としてどのように対応するのかということについて、具体的なこの対応策を国民の前にしっかりと示すことが必要なんじゃないですか。そうしたら、このTPPについても安心して、じゃ任せようということになるんじゃないんですか。どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これまでも関係国から得た情報については、その提供とそして説明をしてきたつもりでございます。ただ、中断があったりしましたし、十分ではないという御指摘もあります。加えて、民主党からの御提起の中でも、きちっと情報を提供をして国民的な議論をするように、説明をするようにという、そういう御提起もありました。
 これまではやってきたつもりですが、そういう厳しい評価もありますので、一層努めていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 具体的に、じゃどういうふうに改善するのかを言ってください。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これからも、入ってくる情報については今まで以上に一生懸命提供をしながら説明をしていくということであります。

○西田実仁君 この国民が抱えている不安を解決しようという積極的な姿勢が見られないのは残念です。
 先ほど申し上げた四日の日の外務省によるTPP討論会において玄葉大臣は、アジア太平洋の成長を取り込むために日本に適合するルール作りをすることが必要であり、中国とともに高いレベルの経済連携をつくる契機にしていくことが求められると発言をしておられます。
 その限りではもっともかもしれませんが、では、野田政権では二十一世紀最大の市場であるアジアのルール作りについていかなるビジョンを持っているのかをお聞きしたいと思います。
 今申し上げた日米経済調和対話においては、例えば米国側から食品添加物についての早期審査を求められております。すなわち、FAO・WHO合同食品添加物専門会議によって安全と認められており、かつ世界各国で使用されている四十六種類の食品添加物の審査を完了することにより貿易を促進すると要望されているわけであります。
 これに対しまして日本国政府は、先ほど申し上げました規制・制度改革に係る指針、四月八日の段階で、食品添加物の承認手続の簡素化、迅速化を推進しようとしておられます。そこでは、たとえ国内企業からの申請がなくても、欧米で広く使用が認められており国際的必要性が高いものについては指定手続の簡素化、迅速化をすると、こうしているんですね。国内の要望がなくても国際的必要性が高ければそれを承認を早くするという、日本国政府は一体誰のための政府なのかというふうに思うわけでありますけれども。
 しかし、こうした日米経済調和対話で米国政府が要求するルールになし崩し的に対応するのではなくて、例えば、将来アジアに適合できるルールとして、そのルール作りに日本としてビジョンを持つ必要があるんではないかと。例えば、この食品添加物でいえば、欧州にはそうした規制機関があります。FAO・WHO合同食品添加物の例えばアジア版をつくろうと、こういうビジョンを日本が持って、それをリーダーシップ持ってやるのが当然じゃないですか。総理、どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 現段階でTPPにおいて、協定交渉で食品の添加物とか個別の食品安全基準の緩和は議論されておりませんが、もしそういう議論があった場合には、これは、例えば今SPSの協定、WTOの中で認められています。この基準をしっかり守っていくということは我が国はやっぱりずっと主張すべきであるし、それは例えば食品の安全の問題、ニュージーランドでもオーストラリアでも、ほとんど日本と同じような意識を持っている国もあります。そういうところと連携をしながらルール作りをする中で、今御提起のあったような問題も提起できればいいというふうに思います。

○西田実仁君 要するに、TPPで今交渉のテーマになっていないということではなくて、なっていなくても日米経済調和対話の中でも出ているわけでありますから、それに対して日本がどう対応するのかというときに、日本の対応だけではなくてアジア太平洋の地域、日本がTPPに入ることでアジアの利益も代表すると言っているんですよ。そうしたら、そういう例えばアジアの基準作りをするリーダーシップを日本がきちんと取るということがなければ駄目だということなんですよ。
 そういう意味で、私は今日、通貨戦略の問題と、そしてこの日米の経済調和対話を中心としまして、どう対応するのかという問題、今、アジアにおけるルール作りの話もしました。どれ見ても、正直言って、残念ながら戦略を立て直さなければ、とてもじゃないけれども今は参加できない、拙速であると、こう申し上げて、質問を終わりたいと思います。

○委員長(石井一君) 以上で西田実仁君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────

○委員長(石井一君) 次に、中西健治君の質疑を行います。中西健治君。

○中西健治君 みんなの党の中西健治です。
 まず初めに、みんなの党は、経済規模でも国際社会における存在感においても縮小を続けている日本の現状を変えていかねばならない、縮小均衡ではなくて成長によって我が国の再興を図ることを目指しており、その観点から、TPPへの参加には明確に賛成の立場であります。
 野田総理はよもやひるむことはないと思いますが、国民に対して一刻も早く自分の言葉で自らの考えを説明すべきだと考えます。もちろん、参加表明しても、政府による交渉の結果、国益に大きく反するような事項があれば、それは国会で審議をした上で承認をしないこともあり得るわけですが、是非そうならないよう、政府は徹底的に国益を主張し、交渉をまとめ上げる大きな責務を負っていると申し上げて、質問に入らせていただきます。
 国民の多くが抱いている漠然とした不安は、言ってしまえば政府の交渉能力に対する不安に起因しているところも大きいと考えます。そこで、まず交渉に当たっての政府の体制についてお伺いしたいと思います。
 TPP交渉に参加する場合、二十一の分野、そして二十四の部会で行われる交渉に当たって、総理の下で誰が総括として論点を整理しながら交渉をリードしていくのでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これ、TPP交渉参加するということになった暁の話でありますけれども、その暁には私の下に、関係する大臣、特に経産、外務、農水等々、深く関係する大臣と、二十一分野ありますのでいろいろなかかわりがありますので、各省の大臣としっかりと連携をして総力を挙げて交渉に臨むと。加えて、実務的に交渉するチームについては、本当にタフなチームをつくるために先例にこだわらず選抜をしていきたいというふうに思います。

○中西健治君 ということは、司令塔を設けないということでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 今のお答え、ちょっと分かりにくかったのかもしれない。私の下にそういう各省の大臣がいるという状況ですので、私ということであります。

○中西健治君 私は、これまでも民主党のいろんなマクロ政策、経済政策について司令塔がいないことを非常に不安視しているということを申し上げてきましたけれども、このTPPのような大事な案件については総理の下に司令塔が一人必ず責任を持ってやるべきなんではないかというふうに考えていますので、是非ともそうしたこともお考えいただきたいと思います。
 もう一つ、体制について。
 議院内閣制の下では、与党と内閣の一体性というのは一応担保されています、今の民主党の状況を見るとそうでもないという気もしないでもないですけれども。TPP、長い交渉の後にTPP締結の暁となっても、そのときに民主党が政権にいるとは限りません。となりますと、最終的に国会が承認しないということを避ける、そうならないようにするためにも、政府と各党をつなぐ協議会を今から設置すべきなんではないでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 一般論として、やっぱり政権交代というのは起こり得るんですね。例えば、自公政権の下で条約の交渉に入り始めたものがあって、それを受けた民主党を中心とする政権でその締結に持っていったということもありました。逆に、私の政権の後に政権交代が起こって、我々がやろうとしていた条約の交渉が途中のときに、じゃ、後を委ねるということはあり得ると思います。そういうことというのは別にTPPにこだわらず一般的に起こり得ることだと思うんですね。いや、だからといって、そのたびに与党、政府と野党と協議会をつくっていくというやり方はちょっと今まで取ったことがないんじゃないかと思いますね。そこはよく検討しなければいけないと思います。

○中西健治君 今まではなかったかもしれませんが、TPPはこれだけ国論を二分するような大きな問題ですので、そうした協議会というのは是非つくるべきではないかと思います。あと、外交の継続性ということも大変重要ということになってまいりますので、是非検討していただきたいと思います。
 次に、政府の情報開示と説明についてお伺いいたします。
 例えば、公的医療制度が交渉の対象となるのか否かについて国会の質問に対する答弁の内容が不十分であったり、紛争解決手続を定めたISD条項についても、これまで日本が結んだFTAでも入っている内容だからTPPでもよいのだという程度の答弁であったりと、情報の開示と説明が適切に行われているとは思えません。しかも、個別の案件を聞かれたら答えるという受け身の対応になっているように見受けられます。こうした対応が政府の交渉能力に対する国民の不信感を増大させているのではないでしょうか。
 そこで、総理大臣にお伺いいたします。政府として、重要な論点については、受け身ではなくて、あらかじめ能動的に各分野ごとに交渉に臨むスタンスを積極的に明らかにしていく必要はないのでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これまでも、関係国から得た情報についてはこれは公開をしながら、可能な限り御説明をしてきたというふうに思います。ただ、御指摘において厳しい点も今までありました、我が党からもいただいておりますので、まだ参加するしないの以前の段階でありますが、どんな形にしろ、集めた情報についてはきちっと国民の皆様あるいは国会にお示しをしながら、判断材料として有効に生かしていけるようにしたいというふうに思います。

○中西健治君 国民の不安を取り除く努力が不十分だという指摘を受けているかと思いますので、是非とも改善していただきたいと思います。
 TPP若しくはもっと広い意味で自由貿易協定に参加するに際して、これから起こるであろう変化に対する覚悟と備えについて具体的に伺いたいと思います。
 自由貿易によって国が富むためには、短期的にどの商品の輸出や輸入がどうなるかといったことではなくて、中長期的に貿易に合わせて国内での生産要素の再配分、労働ですとか資本ですとか、そうした再配分を行う必要があります。国内の産業構造の転換を進めていかなければならないということになってまいります。しかし、これまでの民主党政権の農業政策ですとか労働政策を見ていますと、現状を変えようという意欲は感じられません。TPP推進と矛盾しているように見えてなりません。抜本的な改革を行う覚悟と、それについて適切な備えがあるのかについて伺いたいと思います。
 まず、農業問題について伺います。
 みんなの党では、既に、平成の農地改革を断行して農地を集積する、農業を成長産業にしていくという農業アジェンダを発表しておりますけれども、十月二十五日に政府が発表しました食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を見てみますと、農地集積に協力する者に対する支援を推進するとあり、あたかも現在の戸別所得補償に上乗せをするだけの内容に見えます。めり張りを付けずに単に加算だけでは、財政が悪化するばかりか、肝心な農地の集積も進まないということになってまいります。
 この農家戸別所得補償については、一律全員に配るというのではなくて、専業農家に限定する等大幅な見直しが必要となると思いますが、どのように農水大臣は考えているでしょうか。また、そうした場合、もし痛みを強いるということをする場合には、小規模農家等に対して痛みの緩和策ということも必要になると思いますが、併せてお考えになっているか、お聞かせください。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的に、今お話しのとおりに、五年間の間で何とか平場におきましては二十から三十ヘクタール、そういう経営体を大宗にしていきたいと、こういう考え方でおりまして、そして今現在、約、今の状況ということを申し上げますと、百二十万ヘクタールというものが二十ヘクタール以上の経営体であるということで、ここにベースを置いて集積を図っていきたい、こういうことであります。
 ですから、今先生からお話のあった、当然所得補償制度というふうなのに対する取組もございますけれども、この経営を広げていくというふうなことにおいての規模加算あるいはまたその集積をするという上においては、受け手だけではなしに、協力をして私の土地もお出ししましょうというふうな方々に対して協力金を出すとかという、そういう新しい一つの取組もいたしながら集積化をやっていきたいと思っております。
 また、小規模の農業者というふうなことは、私どもは、いわゆるこの戸別所得補償制度を実行するに当たりまして対象をどうするかというふうなことがいろいろ議論がございました。まず、販売農家というふうなところに対象を置いたところでございます。それがいわゆる小規模農業に対するばらまき政策ではないかと、こう言われましたけれども、元々、基本的な考え方はそこを原点としてどうやって集積化をしていくかというふうなことをやっておるわけでありまして、ゆえに、その制度そのものもこの集積をするというふうな中におけるインセンティブが入っておるわけでありますから、規模拡大というふうなものをこれからも目指していかなければならないと思っております。

○中西健治君 では、続いて、総理にお伺いいたしますけれども、総理は農業の改革はTPPに入る入らないにかかわらず待ったなしの課題だという答弁をされていますけれども、それであれば、農業改革は当然スピード感を持って推し進めていくという考えであると思いますけれども、先ほど申し上げました十月二十五日の基本方針では、農業経営者を客観的に評価する指標の策定をこれから二年掛けて行うということになっておりますが、指標の策定だけで二年も掛かるというのでは全くスピード感に欠けているというふうに思います。
 また、農林水産省の来年度の概算要求でも、新規就農と農地集積等として僅か三百四十億円足らずの予算が計上されているばかりです。これが待ったなしの課題に対応した施策なのでしょうか。待ったなしの課題と発言した総理大臣にお伺いしたいと思います。
 総理大臣の発言に対してですから、総理、お願いします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 農業の再生は待ったなしという発言を私はしております。その背景としては、担い手が不足をしてきて、そして高齢化が進んできて所得が減少しているという状況を放置していたら、この日本の農業は本当にだんだんじり貧に陥ってしまうという危機感を強く持っています。
 そのために、鹿野大臣中心に、先般十月に食と農林漁業再生のための基本方針と行動計画をまとめていただきました。これを踏まえて、まさに農地の集積の加速化であるとか青年新規就農の増大、六次産業化の推進などを、五年間、政府を挙げて着実に取り組んでいきたいというふうに考えております。
 今後の予算編成においても、こうしたものを是非生かしていきたいというふうに考えております。

○中西健治君 ということは、確認ですけれども、三百四十億円では少ない、足らないということで、来年度の本予算においてこれは農業政策を反映させていくという理解でよろしいでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 五年間の集中期間の中でしっかり予算を付けていくということであります。

○中西健治君 是非、来年度の予算からスピード感を持ってやっていただきたいと思います。
 次に、為替問題についてお伺いいたします。
 為替レートは交易条件の基本であります。TPPの下で自由貿易体制を進めるということは、国家が関税によって価格支持をしないということを意味していますから、国家による人為的な為替相場への介入とは整合性があるとは思えません。そこをどのように整理するでしょうか。安住大臣、お願いします。

○国務大臣(安住淳君) 理論上はそうだと思いますが、そこにやっぱり国益というのがあるので、私は介入をためらわずにやらせていただきました。しかし、私だけでなくて、新興国も含めて、またいろんな意味で、それぞれの国は自国通貨の防衛に対してやっぱりやらざるを得ないと。
 私は、自由貿易体制の中で全く実体経済を反映するような為替であればいいんですが、これはもう先生の御専門ですけれども、金融の市場というのはやはり戦後とてつもない大きさになってしまって、これが、まあ暴走と言ってはなんですが、実体経済を反映しないで動いたときには投機的な動きなんかが出てきますので、それが実体経済に大きなひずみを与えるときには、やはり国家としては何らかの措置は必要であろうというふうに判断しております。

○中西健治君 為替を何とかしたいという気持ちはよく分かりますけれども、自由貿易協定と為替介入は思想的には相入れないものだと思います。
 そもそも、為替介入は対症療法でしかないのですから、もっと抜本的な解決が必要であるというふうに考えております。デフレ下では円が買われるのは言わば必然という要素もありますので、デフレ均衡を脱するような施策、例えば政府、日銀が長期金利低下をもっと強力に促す政策こそが必要であると私は考えております。十年物の長期国債の金利、もう見ないでも分かる、常に一%近辺というようなことがデフレ均衡のまさに象徴なのではないかというふうに考えていますので、金利低下を促してお金が動いていく、そんな施策を強力に推進する必要があると思います。これはまた後日議論させていただきたいと思いますが。
 次に、労働市場問題についてお伺いいたしたいと思います。
 産業界で、国際競争力の弱い分野においては生産規模の縮小は避けられません。生産性の低い、成長性の低い産業では、労働者が幾ら頑張って汗水垂らしてもなかなか高い賃金を獲得することができません。労働者がより転職をしやすくなるような仕組みづくりが急務と考えますが、通年採用による経験者採用の促進ですとか、年功序列賃金から能力給への転換ですとか、雇用形態の自由な選択など、労働市場流動化の促進策について、政府としてどのようなお考えがあるでしょうか。

○国務大臣(小宮山洋子君) これは、TPPにもしも参加した場合には、やはり雇用が増える業種、そして雇用が減少する業種、当然あると思います。そのことでなくても、もう既にいろいろと労働の移動ができるようにしないといけない構造になっていると思いますので、今委員が言われたことを含めて、職業訓練、あるいはもっと就職変えることがしやすいような支援をしっかりとやっていきたいというふうに考えています。

○中西健治君 これだけTPPについて国論を二分するような議論が行われているわけですから、労働市場への影響について政府は具体的な試算を行っていると思いますが、TPP締結後、どれくらいの期間にどの程度の雇用調整が行われるかについて、政府としての試算を教えてください。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今申し上げたように、当然雇用が増える業種、減る業種が出てくると思いますけれども、まだ交渉に参加をしておりませんので、TPPで交渉している国のそれぞれの態度がまだ分かっておりません。
 各省で先ほども御紹介あったようにいろいろ試算をしておりますけれども、これは様々な前提を置いた試算ですので、これは交渉の中でしっかりと数字を得て必要な対応を取っていくべきだと思っています。

○中西健治君 こうした重要な雇用問題について政府は当然試算、検討を行うべきであるというふうに考えております。
 小宮山大臣、先ほどセーフティーネットのこともおっしゃられましたけれども、正しい政策を打つためには正しい分析検討が当然必要となってきますので、それをしていないというのは大変問題なのではないかと思います。
 さて、今の厚生労働大臣の答弁も受けまして総理に確認しておきたいんですが、社会保障制度改革については六月に既に政府・与党社会保障改革検討本部決定が出ていますけれども、今後TPPに参加するということになった場合には、セーフティーネットの在り方を始め、必要な見直し、修正が行われないといけないと思いますが、この社会保障制度改革、必要な見直しを行う考えはあるでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 税と社会保障の一体改革の中で御案内のとおり成案をまとめました。その社会保障の改革は、今厚労省の下の様々な審議会で御議論をいただいていますし、税については税調でこれから本格的な議論をしていくという中で、状況的にはもう既にその成案に書いてある検討課題の議論がベースであります。しかもまた、TPPについてはまだ結論も出していない状況なので、そのセーフティーネット云々の議論はまだしていません。必要が出てきたらそれはやろうというふうには思います。

○中西健治君 最後の質問をさせていただきます。
 規制緩和についてお伺いします。
 昨年閣議決定されました規制改革一〇〇には、参入障壁が高いとかねてより指摘されている農業、医療、教育といった分野での大胆な規制緩和がほとんど盛り込まれていません。現在、蓮舫大臣が担当している行政刷新会議の下の規制・制度改革に関する分科会というところから格上げをして、総理の直轄の下でこうした規制改革を行う考えはあるでしょうか。

○委員長(石井一君) 答弁は簡単に願います。

○国務大臣(古川元久君) 行政刷新会議は、これは総理が議長でございます。まさに総理のリーダーシップの下、行政刷新をしていくと。特に規制・制度改革、これは重点的にやっていかなければいけないということで、今分科会をつくって精力的に取り組んでいるところでございます。
 今日いろいろ御議論があった、御質問があった部分については、これはTPPへの参加の有無にかかわらず、農業の問題であるとか雇用の問題であるとか、規制・制度改革、まさにこれは日本がこの二十年間の経済低迷から抜け出すためにやらなければいけない構造改革だと思っておりますので、総理を頂点として内閣一体として、そして与党も含めて取り組んでまいりたいと思っております。

○中西健治君 他の党の質問もありますので、終わります。
 どうもありがとうございました。

○委員長(石井一君) 以上で中西健治君の質疑は終了いたしました。(拍手)
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○委員長(石井一君) 次に、紙智子さんの質疑に入ります。
 恐縮ですが、時間が大分押してきておりますので、答弁は簡潔に、てきぱきと要を得てやってください。
 紙智子さん。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 APECに参加をされる野田総理に伺います。
 TPPの参加交渉について、四十四道府県で今、反対、慎重の意見が上がっています。国民の世論も、八割、九割が説明されていないと感じているわけです。与党の一角である国民新党の亀井代表は反対と言っております。民主党の中では慎重にという人が多数を占めているにもかかわらず、あなたはAPECで交渉参加を表明するおつもりなんでしょうか。
 これまで、国民の皆さんの意見をよく聞いて、十分な議論を踏まえてとおっしゃっておられたわけで、十分な議論はできていない、そして理解もできていない、こういう中で到底参加をするなどとは言えないと思います。これをもし言うことになれば絶対に許されないと、私は参加を言うべきではないと思いますけれども、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 紙委員の御意見はそういう御意見であることはよく分かりました。あるいはまた、地方議会からもそういう意見書が出てきていること、各種団体からもいろんな御要請が出てきています。党内でも活発な御議論をいただいて、昨日御提起をいただいた御提言の中には、慎重、時期尚早、あるいは推進、前者の方が多かったということによって慎重な対応を求めるということでございました。
 そういうもろもろの御意見なども踏まえながら最終的な判断をしていきたいというふうに思います。

○紙智子君 TPPに参加をするということは、全ての農林水産物の関税ゼロ、それを原則とするものです。農水省の試算とシミュレーションでも、関税ゼロになると食料自給率一三%にまで下落をすると。日本の米は九割が輸入米に置き換わり、日本の国土面積の一割に及ぶ百四十六万ヘクタールもの耕作放棄地を生むことになると。これ、百四十六万ヘクタールといいますと、東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県の総面積に匹敵するものです。さらに、米の生産の減少で農村の半分の農家が離農に追い込まれることになるわけです。
 私の出身地であります北海道ですけれども、ここは日本の中でも最も大規模で専業農家が多いわけです。日本の食料自給率の半分を担っている。この北海道はTPPで深刻な危機に追い込まれるといって、先日も北海道を挙げた集会を行いました。道内百七十九自治体の中で百七十六自治体が反対若しくは慎重の意見書を上げているわけです。
 北海道庁の試算ですと、農業産出額で五千五百六十三億円減少すると。関連産業では五千二百十五億円の打撃を受け、地域経済は九千八百五十九億円の打撃を受けると。そして、合わせてその影響は二兆六百三十七億円に上るということになります。米は九割削減、一千百三十億円の生産減、小麦は四百十八億円の減で一万一千戸の農家が離農すると。そして、酪農は生産が大幅減少で二千五百三十六億円の生産減、これによって六千戸の酪農家が離農に追い込まれるということが示されているわけです。
 だからこそ、先日、十一月四日ですけれども、集会の宣言では、TPPは北海道の一次産業や地域経済社会に計り知れない影響を与える、影響について十分な情報提供を行い、農林水産業者、商工業者、医療関係者、消費者などしっかり意見を聞いた上で国民的議論を行うべきであり、TPP交渉への参加を拙速に判断してはならないとしているわけです。あなたは、こうした声にこたえるべきではありませんか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) そういう声が北海道から上がったということは承知をさせていただきました。その上で、要は、アジア太平洋地域の成長力を取り込んでいくことのプラス、それと農業の再生と第一次産業との影響とのバランス、そういうものも含めて総合的な観点から判断をさせていただきたいというふうに思います。

○紙智子君 アジア太平洋の成長を取り込むと言うんだけれども、これはもう既に何度も議論になって、それはできないということが明らかになっているわけですよ。
 それで、この間も度々両立できるようにやっていくんだというお話ありました。しかし、二〇〇七年に、当時、日本とオーストラリアが関税撤廃の問題をめぐって議論になったときに出している農水省の文書があります。それで、関税撤廃した場合に、国内の対策をいろいろ取った場合にどうかということを書いた上で、そこで結論として出しているのは、いろいろ対策を講じても、巨額を投じて措置を講じても国内農業等の生産縮小、食料自給率の低下等は避けられない、いろいろ対策取っても避けられないということを既に二〇〇七年の段階で農水省が出しているわけですよ。そして、いろいろと効率化ということも言っているんですけれども、万全を尽くしてやるということもこの間、野田総理、言われました。
 しかし、今農水省として、農水省も含めて再生実現会議というところで、この間の議論の中でも出していますけれども、この基本方針・行動計画、私読ませていただきましたけれども、これ読みますと、結局、要になっているのは規模拡大、そして集約ですよ、農地の集約、ここを中心にしながらいろいろ戦略つくってやるということなんですけれども、結局、この中身というのは、多くの農家をやっぱり切り捨てていく方向なんですね。
 今、平均で二ヘクタールの農家の面積を二十から三十にしていくということは、百七十三万戸の米農家でいいますと、これ九割の農家が切り捨てられていくことになるんですよ。こんなことをやったら地域が崩壊してしまう。しかも、国際競争に負けない農業というんですけれども、規模を拡大しても、日本の何倍も広大な面積のアメリカやオーストラリアとどうやって勝負するのかということは書いていないですよね。アメリカが百倍、オーストラリアは一千五百倍と言っているわけですから。そういうことも書いていないと。
 しかも、私、本当にこれひどいなと思ったのは、この中に畜産、酪農は入っていないんですよ。一体どうするのか。これについて対策があるんですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 北海道の畜産、酪農というのは、まさしく我が国の食料供給に大きな役割を果たしていただいておりますが、実は、この北海道の畜産、酪農は、既にもうヨーロッパ並みの経営規模を確立しておられるということは御承知のとおりであります。
 ゆえに、これからは、まさしく地方の経営を安定させるためには、六次産業化等々、生産物に付加価値を付けて、そしてまた輸出戦略というふうなものも見直したりというようなことの中で、これから具体的な食と農林水産業の再生基本計画に基づいて取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 具体的な中身が全然分からないんですよ、今の話でいいますと。
 それで、北海道の道東地域は酪農、畜産の地域なわけですけれども、バターやチーズなどの加工用の原料乳のほぼ全量が外国産に置き換わるんですよ。そして、行き場を失う牛乳は飲用乳として都府県に流れるわけですよ。そうすると、都府県の飲用乳は、プレミアム牛乳、これを除いて消滅してしまいかねないという問題がある。牛肉は生産量の七五%が外国産に置き換わる。
 民主党の自給率引上げのための切り札としてきた小麦、これについては壊滅状態ですよ。そして、砂糖の原料作物であるサトウキビ、てん菜、それからでん粉の原料作物であるジャガイモ、サツマイモは、これは一〇〇%輸入に置き換わると。これ、農水省のシミュレーションですよね。そういうことが示されているわけです。そうなると、北海道の畑作というのは輪作体系でやってきましたから、これ、もう完全に破綻します。それから、北海道だけじゃなくて、沖縄、鹿児島の生産も壊滅すると。地域の経済が成り立たなくなるということですよ。
 こういう不安に、総理は、絶対そうならないと、必ず回避できるんだということを言えますか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 経済連携ごとに私どもは考えていくということを申し上げているわけでありまして、まだTPPについては、総理のおっしゃるとおりに、どういうふうな動きをするか決めておりません。そういう中で、新たな財源という措置も場合によっては講じていかなきゃならないと思っております。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 砂糖の原料作物であるてん菜は、北海道の御指摘のとおり輪作に欠くことのできない作物であります。また、サトウキビは、台風の常襲地帯である鹿児島県とか沖縄県における基幹作物であります。また、カンショは、保水性の乏しい火山灰土壌の南九州の代替困難な作物であります。
 それぞれ、品質格差がなくて海外産品に置き換わりやすい特徴を有しているというのが実情だというふうに思いますので、TPPに入るとか入らないとか関係なく、これらについては、まさに今、鹿野大臣の下で食と農林再生の漁業本部でまさに基本方針と行動計画を作りましたけれども、これらによって体質の強化であるとか六次産業化であるとか等々のまさに高いレベルの経済連携と農林漁業の再生が両立をできるように努力をしていきたいというふうに思います。

○委員長(石井一君) 紙智子さん、時間が来ております。

○紙智子君 全く説明になっていないです。誰も納得できません。やっぱり参加はできないということをはっきりおっしゃるべきだし、私はもう何よりも、今被災して苦しんでいる皆さんがどれだけ懸命になって復興のために頑張っているかと、そのことを潰すようなこのTPP参加は断固として参加しないということを言っていただきたいことを申し上げまして、質問を終わります。

○委員長(石井一君) 以上で紙智子さんの質疑は終了いたしました。(拍手)
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○委員長(石井一君) 次に、舛添要一君の質疑を行います。舛添要一君。

○舛添要一君 総理、TPP参加に関しまして慎重派の意見も非常に強いと。それは私、二つ理由があると思うんですね。
 一つは、十分な情報の開示がなされていない、全く分からないところで判断される。だから、反対とおっしゃる方のうちのその半分ぐらいは恐らく情報ないから反対じゃないかというふうにも思っています。
 それからもう一つは、TPP参加したときにどういうメリットがあるかということの話の中で、後ろ向きなんですよ。つまり、TPPに入って国を開かないと日本が駄目になる。じゃ、どう駄目になるんですか。
 反対する方は、先ほど来の議論のように、農業ではこういう弊害がある、この分野はどうだということがあると思うんですけど、この二つをしっかりやっていただかないといけないと思いますが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 御指摘のように、例えば世論調査をやっても、まあ賛否の数字はいろいろあるんですが、分からないという方が多いということと、それからやはり情報開示をしっかりやってほしい、説明を果たしてほしい、そしてその議論の材料を提供してほしいという御要請をたくさんいただいております。そのことは十分重く受け止めて対応していかなければいけないというふうに思います。

○舛添要一君 医薬品、医療機器含めて医療の分野について、時間がありませんですから具体的な一例を取ってお話をお伺いしたいというふうに思いますけれども、私が大臣のときも相当いろいろこの分野に関してアメリカ側から要求がありました。TPPという枠組みとは別に、今でも二国間でアメリカ側からたくさん要求があります。例えば、新薬の承認を早くしてくれと、ドラッグラグって言います。それから、混合診療の解禁であるとか、株式会社の参入であるとか、薬価などの規制撤廃であるとか、いろんな要求が出てきているんですけれども、当然TPPの議論の中でこれも出てくると思います。
 そのときに、今私が四つぐらい申し上げましたけれども、具体的に野田政権としてどういう手を打っていくのか。じゃ、ドラッグラグはどうするのか、混合診療どうするのかと、そういうことについて具体的にお決めになっているんでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 現時点において例えば公的保険の問題等がTPPの交渉の俎上に上っているということはございませんが、ただ、舛添さん御指摘のとおり、アメリカからの要求では、医療分野でいろんなものがもう出てきています。仮にTPPの交渉参加しようとする前の、例えば二国間の協議等で出てくる可能性などはこれは否定できないというふうに思うんですが、公的保険を壊すようなことはあってはいけないと。
 混合診療の議論は国内では国内で今日いろんな議論があると思いますけど、この交渉の中で日本が公的保険を壊していくようなことはあってはならない、これは守り抜いていかなければいけないというふうに思いますし、あと、その他いろんな、どういう話が出てくるか分かりませんけれども、対応困難なもの、対応可能なもの、自分たちの国益を踏まえて主張をしていくということであります。

○舛添要一君 TPPに参加すると国民皆保険が破壊されるという議論がありますけれども、私は国民皆保険は絶対守り抜くべきだと思いますし、それはアメリカだって日本の冠たる国民皆保険を潰すためにやっているわけではありませんから、そういう理不尽なことは言ってこないというふうに思います。
 それで、もう一つは、国民の命を守るのが政府の仕事ですから、例えば混合診療にしても、十月の二十五日でしたか、最高裁の判決出ました。だけど、患者の立場に立ってみると、先進的な自由診療をすれば命助かるのにそれできないというのは何なんだということに対してどう答えるか。それから、新薬だって、アメリカで承認されているのに何で日本で承認されないか。ドラッグラグ、私、大臣のとき、四年半掛かりましたよ。今ぐうっと努力して縮めてきている。何とか一年半ぐらいにしたい。そうすると、お金持ちしか助からないんですよ。アメリカに高い金出さないと買えない。
 そうすると、やっぱりそういう命を守るという観点から見たときに、アメリカが言ってくることが一〇〇%全部理不尽で日本側の言うことが一〇〇%正しいとは限りません。私は、あえて言うと、既得権益の上にあぐらをかいて、今のままの方がはるかにいい、規制の撤廃、改革も何にもしないと、こういうことであってはならないと思います。
 そして、民主党政権になって、残念ながらその改革はストップしているんですよ、総理。例えば、新しい薬について、官民の対話を始めたんですよ。それは日本にいる外資も全部含めて、厚生労働大臣、経済産業大臣、文科大臣、科学技術大臣、それで徹底的にやって、どうすれば薬の面でいい薬を開発して日本人そして世界の人の命を救うか、それをやっているのに、全然やっていないんですよ。一回もやっていません。ですから、そういうことについて、TPPがあろうがなかろうが、しっかりやっていかないといけないと思います。
 だから、答弁にいろいろさっきから詰まっているのは、私は同僚の意見、質問を聞いていても、ちょっととんちんかんな質問だなと医療分野について思うのが幾らもありました。しかし、全然それ反論できないじゃないですか。だから、きちんと今言ったようなことについて総理が自らリーダーシップを取ってやっていただきたいと思いますが、どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 前向きな本当に御提起いただきましてありがとうございます。
 仮に交渉参加する場合においては、さっき守るべきものは守ると申し上げました。これは、まさに国益を踏まえて守るべきは守る。物によっては御指摘のように何かを受け入れることによって国益につながることもあると思うんです。そこは主体的に判断をしていくことが大事だというふうに思います。

○舛添要一君 一つの具体的な例を言いますと、薬の値段、薬価、これはビタミン剤なんか自由に買えるのは自由に値段が決まりますけれども、公的保険の適用についてはきちんと政府が決めるんです。その決めるのは相当合理的にやっていますけれども、どんどん売れるようになると、市場拡大に伴う再算定ルールというのがあって、要するにどんどん売れるいい薬開発して、売れれば売れるほど値段下げさせられちゃうわけです。そうすると、一生懸命いい薬開発しようとしたって、もうばかばかしくてやらないよと。そうすると、いい薬の開発ができないわけですよ。
 私は、恐らくこの再算定ルールについてアメリカ側は言ってくると思います。韓国でも同じような問題が起こっていると思う。こういうことについてきちんと総理の指導の下に準備しておかないといけないと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まさに、懸念であるとか可能性として出てくるものについての備えはしっかりしていかなければいけないと思いますし、再算のルールという話もございましたけれども、そういうことも含めて、例えば韓米でどういう協議があってどういう交渉になったのかとか、ちょっと過去の二国間の交渉なども含めての対応を、備えを万全にしていかなければいけないだろうというふうに思います。

○舛添要一君 もうちょっと具体的に言いますと、ある薬、ある症状について適用できるということでやったんだけど、学者が調べると、こっち側の分野にも適用できるじゃないかといったら、一つ加わるわけですよ。そうすると、その途端に、いいことなのに値段が下がっちゃう。ところが、要するにどんどん売れるやつは値段下げないと。日本の医療費を安くしようという意思からそういうことをやるんですけれども、私は、三十六兆円という日本の医療費を下げるのは、小手先の薬価の規制をしたり診療報酬でどうするという話じゃなくて、まさに税と社会保障の一体改革の大きな中でやるべきであって、そっちをやらないで人の命を救う薬を勝手に行政の方で値段適当に上げる。透明性がないんですよ、そこのルールの策定について。
 ですから、そういう透明性を保つために私は政権交代があったと思っていますけれども、先ほどの、我々がせっかく自公政権のときにやり始めた官民対話だってやめちゃっている。何のための政権交代だったんだという思いは私はあるんですけれども、どうぞ改革の方向にかじを切ってもらいたいと思います。いかがですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 社会保障、医療の分野、これは一つは一体改革の方で具体的な検討課題詰めていきますが、一方で、例えば医療の分野に限らずでありますけれども、行政刷新会議使っての、規制・制度改革を使いながらの改善ということも、これも私が議長でございますのでしっかり進めていきたいと思いますし、程なく始まる政策型のいわゆる事業仕分、政策仕分、提言型政策仕分でも社会保障の分野扱いたいと思いますので、改革の姿勢は強く示していけるように頑張ります。

○舛添要一君 冒頭申し上げましたけれども、TPPに参加しないと日本が駄目になる、だから参加するんだという後ろ向きの姿勢しか見えてこない。
 やっぱり夢を与えるべきなんですよ、この交渉に参加するなら。一つ例を挙げますと、成田空港、あんな遠くて不便だと。今、韓国の仁川がハブ空港になっています。薬について言っても、シンガポールとかマレーシアがセンターになっているんです。私の夢は、薬について、人類の命を救うわけですから、日本にそういうセンターをつくって、ハブ空港に当たる日本の製薬ということをつくりたいと思っていますけれども、是非そういう方向についてお考えいただきたいと思いますが、この最後の御答弁をお願いいたします。

○委員長(石井一君) それじゃ、最後の総理の答弁をお願いします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 大変建設的な提言として受け止めさせていただきました。参考になりました。ありがとうございます。

○舛添要一君 終わります。

○委員長(石井一君) 以上で舛添要一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────

○委員長(石井一君) 次は、福島みずほさんの質疑を行います。福島みずほさん。

○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
 社民党はTPPへの参加に反対です。国民の命を壊し、農業を壊し、命を壊すからです。私が国会での最後の質問者です。国会で一度も参加表明せず、なぜ外国で参加表明できるんでしょうか。国会を愚弄するにも程がある。どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 決して国会を愚弄するつもりはありません。
 今日の衆参における集中審議、あるいはこの集中審議だけではなくて、例えば衆議院の予算委員会でもこういう御議論がございました。そういう御議論なども踏まえて、党内のいろいろ御提言もございましたけれども、そういうものを踏まえて議論をして、そして結論を出していきたいと思いますが、もちろんこの後だって、こういう議論する機会はあるだろうというふうに思います。

○福島みずほ君 今日、飛行機でAPECに立つわけじゃないですか。ここ、国会ですよ。なぜ総理は国会の中でこのTPP参加の表明をしないんですか。総理はどこの国の総理大臣なんですか。誰のための政治やっているんですか。国会で参加表明せず、国内ではドジョウは泥の中にいて、外国に行ってなぜ表明できるんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 意思決定のプロセスがあります。それは、昨日、一応会見をして公表をするという予定でありましたけれども、しかし、政府・与党、その三役会議の中で更なる議論をしましょう、そしてその上で関係閣僚委員会での、政府内での調整をして結論を出していきましょうということがあるので、そのプロセスを経てから公表をする、結論を出すということでございます。

○福島みずほ君 時間稼ぎとガス抜きじゃないですか。国会の中でぎゃあぎゃあ言われたくないから表明しないだけなんですよ。
 何でここの国会で、民主主義のみんなの代表が集まっているところで参加表明ができないんですか。参加表明、記者会見は駄目です。記者会見ももちろん重要ですが、国会で言わないで外国で表明することに国会議員が怒っているんですよ。国民が怒っているんですよ。国会軽視ではないですか。もし参加表明するんだったら国会で言いなさいよ。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ぎゃあぎゃあと言われるのが怖くてというより、今日表明しないことによってぎゃあぎゃあ言われることも多いんです。そういうことではないんです。
 あくまで、先ほどの意思決定のプロセスの中で、これは、交渉事はやっぱり最終的には政府が決めることであります。それについては国会でこれからも御議論をしていただくと思いますし、まだこれ決めてはいませんけれども、仮に交渉参加をしていくならば、政府が署名したら国会で批准をするという中での御議論もあるわけで、そういうプロセスは当然たどっていかなければいけないと思います。

○福島みずほ君 いや、違うんですよ。TPPへの参加表明が極めて重要なことだから問題にしているんです。これから議論していただく、それはもちろんです。
 しかし、私が、社民党が問題だと思うのは、TPP参加表明を一切今の時点で国会で言わない。私、最後の質問者ですよ。国会で一度も参加表明せずに、にもかかわらず外国で参加表明するということが国会軽視で、国会を愚弄しているということなんですよ。
 手続がというのは分かります。でも、もし国会での表明が間に合わないのであれば、APECで表明するべきじゃないじゃないですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国会の場で、もちろんその意思決定のプロセスが間に合って表明ができればそれはできたというふうに思いますし、まだその結論出していないわけですから、これから大事な議論があります。その前に予断を持って物を言うことは、最後の質問者とはいえそれは言えないということでありまして、もし決まったならば、それは機会があるごとに表明を、国の内外を問わず表明をしていくということであります。

○福島みずほ君 違うんですよ。APECで参加表明することを私たちは本当に心配している、いろんなものが壊れるから反対しているんです。
 じゃ、総理、APECの参加表明、アメリカに対する忠義と国会と、どっちが重いんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 今の二者択一は全く意味がない。別にアメリカへの忠義で物事を考えようと思っているわけではありません。
 APECに今度、あした行きますね。その際に、参加表明をするかどうかは別として、TPPについての判断というのは、どこかの国をおもんばかってということではありません。主体的にアジア太平洋地域の中で我が国がどういう位置を占めていこうとするのか、あるいは、課題はあるかもしれません、懸念もあるかもしれません、だけど、そのプラスとの中でどう総合判断をするのか、アジア太平洋地域の成長力を取り込んでいくために、まさにそういう覚悟を持つのかどうか含めての総合的な判断をするということであります。

○福島みずほ君 アジアの経済成長を取り込むのであればASEANプラス6でもあるという議論が今日あったわけです。
 私が、今日冒頭、総理に一番申し上げたいのは、この国会で参加表明をせずに外国で言うということなんです。国会で言わないというのは問題じゃないですか。記者会見では駄目なんですよ。なぜ国会で総理はきちっと説明し、国会議員と議論をしないんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) だから、国会でこうやって今御議論もいただいています。衆議院の予算委員会でも御議論をいただきました。それはやっぱり質疑はしているわけです。それはもちろん、政府の姿勢の固まり具合によって議論の仕方は変わるかもしれませんが、現段階においては我々の持っている考え方とか情報をしっかり踏まえてお話をしているつもりであります。

○福島みずほ君 いや、ひどいんですよ。今夜九時に表明するというふうにも言われているじゃないですか。だったら国会で言ってくださいよ。私たちは国民の意思を受け止めて、総理がAPEC参加をするかどうかを、それは極めて重要なことだから、重要なことは国会で言ってくださいよ。どうしてそれを外国で発表するのを私たちは日本国内で聞かなくちゃいけないんですか。記者会見だってもちろん重要です。でも、日本の国会を愚弄しているじゃないですか。国会でなぜ言わない。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) まさに、意思決定のプロセスはこれからたどるんです。その前のたまたまやっぱり国会になってしまったので、それは、昨日の分が今日にずれたということはあるかもしれませんけれども、でも、その都度、政府の姿勢が固まり次第、その熟度含めてしっかりと審議には応じていきたいというふうに思います。

○福島みずほ君 国会で、国会でということは、国民に対してきちっと表明し議論をしない段階でAPECで言えないですよ。これほどまでに国会を愚弄したら駄目ですよ。
 総理、アメリカから日本はずっと、一九八〇年代から、とりわけ日米構造協議で始まり、いろんなことを言われてきております。二〇〇六年、日米投資イニシアティブ報告書もその一つです。この中に医療や教育での規制緩和、混合診療などや労働法制、いっぱい入っています。ホワイトカラーエグゼンプションなど、かつて政府は法案を出し、全力でみんなとそれを潰しました。そんな経過があるから本当に心配をしています。
 小泉構造改革で地方や生活が壊れ、だからこそ政権交代が起きました。なぜ総理は今、小泉構造改革をやろうとしているんですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) ちょっとやっぱり性格が違うとは思います。まさに今TPPに交渉参加するかどうかということは、幅広くもう高いレベルの経済連携を日本はやっていこうという中の一環の中での一つの判断をする際の対象になっているということであって、これはまさにガットの体制の中で日本は貿易立国として歩んでまいりました。自由貿易というのは、まさに日本としては国是だというふうに思います。それに更なるフロンティアをつくっていくのかどうかということの判断をするということであって、小泉改革のときの一連の改革とそのニュアンスはやっぱり違うと思います。

○福島みずほ君 アメリカが日本に対して攻めていることは、要求していることはずっと一貫しているじゃないですか。TPPの枠組みを使って、これまで日米二国間の協議の中で辛うじて日本が守ってきたものを、訴訟や、さっき、仲裁センターや、いろんな形でこじ開けられていくんではないか。日本がどんなに私たちが応援しようとしても崩れていくんじゃないかということを心配しているんです。
 具体的に最後に聞きます。
 オーストラリアの砂糖が入ってきたら沖縄のサトウキビは壊滅的打撃を受ける、オーストラリアの牛肉が入ってきたら日本の牛肉は、畜産は壊滅的打撃を受ける、お米が入ってきたら瑞穂の国は壊れます。さっき、TPPに入るかどうかに関係なく農業を応援しますと言いますが、違うんですよ。TPPに入ったら見事に壊滅的打撃じゃないですか。沖縄はサトウキビ以外に何を作れるんですか、離島で。みんな本当に悲鳴を上げますよ。そういう国民の声を聞かなかったら、野田内閣の命取りになりますよ。国民の声を聞けですよ。
 どうですか。これはどうやって守るんですか。

○委員長(石井一君) 時間が来ておりますので、最後の簡潔に御答弁を願います。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国民の声も様々な声があります。そういう声をしっかり受け止めながら、しっかりと決断をしていきたいというふうに思います。

○福島みずほ君 国会で説明をせずに、記者会見でTPP参加表明し、APECに行き表明することは断じて許されない。よもやそういうことはなさらないでしょうということを申し上げ、質問を終わります。

○委員長(石井一君) 以上で福島みずほ君の質疑を終了いたしました。(拍手)
 これにて環太平洋パートナーシップ協定等に関する集中審議は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十二分散会